里山に数寄屋造の隠れ家的温泉旅館でしっとり

大阪難波から電車で約40分、駅から徒歩1分と好アクセスながら、日本の原風景が広がる天見の里の渓流沿いに立つ「あまみ温泉 南天苑」は、明治・大正時代を代表する建築家辰野金吾氏によるものです。東京駅の設計でも知られる辰野氏が手がけた建築物のなかでも貴重な和風建築で、1913年に堺市大濱に建てられましたが、戦火により本館は焼失。1935年に天見へ移築されていた別館だけが残り、1949年に「あまみ温泉 南天苑」として創業しました。移築については長年、真偽不明とされていましたが、2002年の調査によって移築が事実だと判明、2003年には「歴史的な様式をとどめ、現代に残る近代建築」として国の登録有形文化財に指定されました。

茶室のような侘び寂びを感じることができる風情ある佇まいは、心を落ち着かせてくれます。創業当時から残る8畳の本間と6畳の次室に分けられ、二家族でも利用できる「泉灘」をはじめ、庭園に面した7室のお部屋や、創業当時は個室家族湯だった部屋を和室に改装した「東雲」など、昭和の趣を随所に残す6室のお部屋に加え、2015年には露天風呂付き特別室「清流亭」もオープン。1室限定の離れにある特別室で、8畳の主室に囲炉裏、川側に広縁と豪奢な間取り。さらに部屋付きの露天風呂は天然ラジウム泉が源泉掛け流しの贅沢。 夕食も特別会席を用意、広々としたお部屋で供され、なんともゴージャスな旅に！

こちらの温泉は南北朝時代（1300年代）に開湯した河内長野市最古の湯「天見温泉」。泉質は天然ラジウム泉で、お湯の中でラドンという気体になり、体を内と外から癒してくれます。筋肉痛や神経痛、疲労回復などに効能があるとされ、日頃の疲れをリセットするにはピッタリ！ 大きな窓から季節ごとに表情を変える周辺の自然を眺められる大浴場は、深夜や早朝も利用可能なので、運がよければ貸切状態、なんてことも。食事とお風呂が楽しめる日帰りプランもあるので手軽なショートステイでリフレッシュ、なんて過ごし方もいいですね。

土地の気候・風土が育んだ旬の素材を活かすのが、日本料理の醍醐味。「味良く、香り良く、目に美しく」を信条とした夕食に供される会席料理は、毎月献立が変わるこだわりよう。春には山菜や筍を、夏はこの時期だけしか食べられない走りの鱧や鮎、蓴菜を、秋には松茸や栗、銀杏、そして冬には郷土料理・ぼたん鍋をはじめとする鍋料理と、食材たちが一番美味しくなる、まさに「旬」の時期を逃さない料理の数々は感動もの！ 特に冬のみ限定の、創業以来70年以上人気のロングセラー「金剛鍋」は必食！ 金剛山の麓にあることから命名されたこの人気メニューは、和洋の野菜と海山の幸を牛乳だしで煮て、トマトピューレベースで食べる和洋「混合」の逸品。色彩豊かな料理の数々が部屋食というのも素敵ですね。

レストランもコンビニエンスストアもない、人里離れた里山ならではの過ごし方は、やはり旅館のお部屋でゆっくり？ だけではもちろんありません。日本の原風景が広がるロケーションは、周囲を散策するだけで心癒されること間違いなし。もちろんサイクリングやトレッキングで、もう少ししっかりと体を動かしてもOK！弘法大師ゆかりの地や、修験道の開祖・役行者ゆかりの経塚、楠木正成ゆかりの古戦場など、歴史ある天見の里は見どころも随所に。宿でのんびり派には、野鳥のさえずりが心地よいBGMになる、約3000坪の広大な庭園で季節を肌で感じながら過ごしたり、夏限定でオープンする緑に囲まれたプールでアクティブに過ごしたり、夜には天見川に蛍が飛び交う幻想的な風景もおすすめ。里山リゾートの過ごし方はどこまでも多彩ですね。