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日本独特の文化に触れ、心も体も満たしてくれる極上の癒しを体験しませんか。価値ある食体験と心身をリフレッシュするリトリート体験。その双方を存分に楽しめるおすすめのコースをご紹介します。
日本には都市部だけではなく郊外にも、訪れるべき隠れた名所が数多くあります。都市部の喧騒から離れ、のどかな場所で、ゆったりとしたペースで息を呑むような景色を楽しんだり、豊かな地域の歴史を探求したり、地元の食文化を味わったりしながら、心も体も満たすことができるでしょう。
最高のリトリート旅をするために、私たちは大阪、兵庫、徳島の各県を巡る3日間のツアーに出かけました。ぜひこの素晴らしい地域の魅力を一緒に感じていただけたらと思います。今回ご紹介するスポットは、訪れる価値のある隠れた名所ですのでぜひ訪れてみてください。
旅のスタートは大阪の北に位置する穏やかな自然環境が広がる北摂エリアです。箕面駅で親切で知識豊富なガイドに迎えられ、最初の目的地である箕面大滝へと向かいました。この壮大な33メートルの滝は、日本の滝百選にも選ばれており、特に秋には周囲の木々が赤や金色に染まって、非常に美しい景色を楽しむことができます。運が良ければ野生のニホンザルが遊んでいるのも目にすることができるかもしれません。
その後、途中の山道で景色を楽しみながら、瀧安寺へと向かいます。瀧安寺は日本における仏教の初期である7世紀に創建され、長い歴史を持ち皇室とも関わりがある重要な寺院です。詳細は寺院の敷地を歩きながらガイドが説明してくれます。
ツアーのハイライトは、秋の紅葉の下、赤いモミジの葉に囲まれた通常一般には公開されていない特別な部屋で、熟練のインストラクターによる2時間のヨガレッスンを体験することでした。静かな環境の中での本格的なヨガ体験を通し、心身ともにリフレッシュすることができました。このヨガ体験はリラックスでき、旅行の初日に、今後に向けてしっかりと準備を整えることができました。
その後、近くの「蕎麦処 KAJIKASOU 箕面」という蕎麦屋で昼食をいただきました。ここでは、地元箕面の特産品を使った美味しい蕎麦を味わうことができます。私は地元のゆずを使った温かい「箕面そば」をいただきました。そのさっぱりとした風味と温かさが、箕面でのリラックスした朝を締めくくるのにぴったりでした。
次の目的地は、黒豆や米などの高品質な農産物で知られる兵庫県東部の丹波地方でした。私たちは最初に西山酒造場を訪れ、施設の見学をした後、品評会で賞を受賞したこともある日本酒の試飲を楽しみました。
日本の伝統的な酒造りは2024年12月にユネスコにより「無形文化遺産」として正式に認定されました。これは、酒造りの過程に深い歴史があることを示しています。西山酒造場でもその伝統と歴史の深さを感じることができます。創業は江戸時代末期の約175年前に遡り、現在でも経営を続けています。木造蔵をリノベーションした施設「鼓傳-koden-」内には、「鼓懐廊(つづみかいろう)」という展示スペースもあり、代々受け継がれてきた歴史的な書や画、写真の展示を見ることができます。伝統的な酒造りの文化に今でも敬意を払っており、守り続けていることがわかります。
西山酒造場の魅力は、伝統的な酒造りを後世に残すべく、様々な体験を旅行者に提供している点です。酒の試飲に加えて、発酵を楽しく学べるワークショップや、健康志向の発酵料理、アフタヌーンティー、さらには旧酒蔵内に1日1組限定で宿泊することもできます。
ツアーの最後には、西山酒造場を代表する日本酒の試飲が行われました。試飲には日本語と英語で提供されるテイスティングカードが付き、日本酒を初めて味わう方でもそれぞれの種類の特徴を理解し、楽しむことができました。
初日は、篠山城下町ホテル NIPPONIAで締めくくりました。NIPPONIAは、歴史的な建物をユニークな宿泊施設にリノベーションすることで知られるホテルブランドで、伝統的な建築と現代的なアメニティが見事に融合しています。丹波篠山では、複数の宿泊棟が街に点在し、それぞれが篠山の豊かな歴史を感じさせる一方で、現代のラグジュアリーホテルとしての快適さも提供しています。
レストランは「ONAE棟」に併設されており、贅沢な食事が提供されました。夕食は、地元の旬の食材をふんだんに使った7品のコース料理で、地域特有の生産物をフランス料理にアレンジして提供してくれます。地元の酒、ビール、ノンアルコールの飲み物も楽しめました。どの料理も芸術作品のように美しく盛り付けられ、地域の食文化の歴史を物語るものでした。特に地元の「但馬牛」を使ったグリル料理と、地元産の黒豆を使用した丹波のクラフトビールは絶品です。
歴史に満ちたこの建物で過ごすひとときは、篠山の歴史に囲まれた素晴らしい体験であり、コースの初日を締めくくるにはぴったりのホテルです。
2日目は、魅力的な篠山城下町を散策することから始まります。地元の歴史に精通したガイドが私たちを迎え、丹波篠山の特徴的で歴史的な街並みや建物を案内してくれます。街を歩くと、昭和時代(1926-1989)の玩具を扱う店や、江戸時代(1603-1868)の布を取り扱う布屋、17世紀以来篠山城とともに地元で守られてきた春日神社など、老舗の店舗が点在し、タイムスリップした感覚になります。
また丹波篠山市立歴史美術館にて、この地域についてさらに学ぶことができます。美術館自体も、街の長い歴史を象徴する建物で、明治時代(1868-1912)の裁判所として使用されていた建物がそのまま保存されています。館内には、篠山城周辺で発展した豊かな文化を示す歴史的な陶器「王地山焼」や、カードや鏡などの珍しい道具、保存された巻物や地図などが展示されており、町の歴史を深く感じることができます。
これまでの旅では、主に食の面から各地の名産品を楽しんできましたが、次の目的地では、歴史ある産業が食や飲み物だけにとどまらず、他の形でどのように発展してきたかを目の当たりにすることができます。それが、兵庫県東条秋津地区にある「山田錦酒器」の陶芸工房、東条秋津窯です。この地域は、高品質な日本酒の原料として知られる「山田錦」の産地で、東条秋津窯では職人兄弟2名で地域の特徴を活かしながら陶芸技術を守り続けています。彼らは、地元の素材を取り入れた酒器や陶器製品を作っているのです。
この工房のユニークな特徴は、地元の米農家と協力しながら、山田錦を育てている実際の田んぼの土や、山田錦の稲藁を伝統的な酒器や陶器に組み込んでいる点です。これにより、陶器には独特のモノクロームの釉薬が施され、深い灰色の黒と雲のような白が交わる色合いが現れます。この色の風合いは、日本の冬の風景を彷彿とさせ、長い歴史を持つこの地域の豊かな農業を反映しています。
さらに、この工房では陶芸体験が可能で、酒米の王者といわれる「山田錦」を育てる土を混ぜ込んだ、こだわりの粘土を使って自分たちの酒器を作ることができます。東条秋津窯の職人から器を強く美しく仕上げるための技術や微細な手の動きを学びながら酒器を制作し、仕上げの色を選んだら体験は終了です。焼き上げは職人が行い、完成した品は自宅に発送する手配をしてくれます。
リラクゼーションと宿泊体験において、禅坊 靖寧ほど素晴らしい場所はなかなかないでしょう。この静かな禅のリトリート施設は、淡路島の穏やかな丘の中に位置し、秋には紅葉が広がる周囲の豊かな自然と景色が訪れる者を迎えてくれます。丘の上にぽつんと浮かぶ壮大な木造建築の外観は圧倒的で、ここでの滞在は贅沢なマインドフルネス体験を提供してくれます。
到着すると、まずその素晴らしい景観に心を奪われました。広がる自然の中に建つ禅坊 靖寧の静けさは、私たちを自然にリラックスさせ、これからの体験への期待を高めてくれます。施設内に入ると、8割以上が木材でできているというウッドベースのデザインが印象的で、その優しい木の香りがリラックスした雰囲気を作り出しています。部屋の家具はシンプルでありながらも快適で、テレビなどの電子機器がないため、現代の喧騒から離れて心と身体を落ち着けることができます。
施設内を案内される中で、禅の精神に基づいたデザインが徹底していることに気づかされます。禅デッキには、シンプルな禅の瞑想クッションが並べられており、周囲の景色を眺めながら静かに瞑想や考え事にふけることができます。ここで、私たちの1日のウェルネスセッションを始めることができます。瞑想のガイドとヨガのセッションを通して、淡路島の涼しい空気の中で、心が穏やかに包まれ、すべての意識が今、この瞬間に集中していくのを感じることができます。
ZEN Wellnessの後は、禅坊 靖寧の禅坊料理が提供されました。この料理は、動物性食品、砂糖、小麦粉、油、人工調味料を一切使用せず、代わりに新鮮な地元の食材が使われ、それぞれの食材の持ち味を最大限に生かして作られています。料理は視覚的にも美しく、味わいも繊細で、特に印象に残ったのは野菜寿司です。様々な野菜、きのこ、ハーブを使い、彩豊かな盛り付けで、見た目も食べるのも楽しませてくれました。
禅坊 靖寧での体験は、心と体を癒し、静寂の中で再び自分と向き合う貴重な時間となり、この静かな場所でのひとときを、より深く味わうことができます。
日本料理のルーツを探るには、味噌の世界を掘り下げることが欠かせません。味噌はスーパーマーケットでも売られている日本では馴染みの深い手軽な調味料ですが、伝統的な製造方法を守り続けている地域の生産者たちも多数います。味噌という基本的な食材の起源を学ぶために、これほど適した場所はないでしょう。それが、徳島県の井上味噌醤油です。1875年に創業した、家族経営のアットホームな味噌蔵です。ここでは、味噌の製造プロセスの裏側を見学させてもらいました。
ここの味噌蔵の経営は、1995年の阪神淡路大震災で受けた影響と、それに立ち向かうための回復の歴史でもありました。震災後、倒壊した味噌蔵の建物を元々の伝統的な建築方法で再建させるため、地元の神社建築職人や伝統的な漆喰職人が携わって、土壁が復元されました。この伝統的な建物の構造は、味噌醸造にとって微生物に最適な環境を提供するため、温度管理が厳密に求められる味噌づくりに適した建築様式として、地域の伝統を尊重しながら再建されたのです。
味噌蔵内には、味噌の風味を決定づけるための発酵桶が並んでおり、これらも専門の職人によって製作されています。これらの桶は、井上味噌醤油の味噌に特有の風味を作り出すための重要な役割を果たしており、その技術とこだわりを目の当たりにできます。
実際に味噌作りをしている職人さんから、麹菌の生育プロセスや、味噌作りの基本的な流れを学ぶことができます。さらに発酵の微妙な温度調整や時間管理など、手間と時間をかけて作られる味噌の奥深さも体験できます。参加者には英語の資料やデモンストレーションも用意されているので、外国からの観光客も安心してその魅力に触れることができます。
また、味噌の色や味わいが、発酵期間や使用される基本材料(米、大豆、塩など)によって異なることを学ぶことができます。このツアーでの一番のハイライトは、150年以上使われている発酵桶で作られた味噌の試食です。この歴史の詰まった味噌を味わうことができる貴重な機会であり、井上味噌醤油の長い歴史と伝統を舌で感じることができます。
この体験では、味噌という調味料がどれほど深い歴史と文化を持ち、またどれほど職人の手による繊細な技術が込められているかを実感しました。食のルーツを学ぶには、やはり実際にその場所を訪れ、プロセスを体験することが何よりも重要であると感じた瞬間でした。
この地域特有の自然現象を体験するため、私たちはうずしおクルーズに乗船しました。この30分間のボートライドでは、鳴門海峡に広がる鳴門の渦潮を間近で見ることができます。渦潮は、淡路島(兵庫県)と鳴門(徳島県)の間にある海峡で自然に発生する現象で、潮の干満によって渦潮の発生有無が変わるため、タイミングが非常に重要です。私たちは幸運にも、ちょうど渦潮の潮流が最高潮を迎えつつあるタイミングで訪れることができました。
ボートに乗り込むと、すぐに新鮮な海の風と爽やかな海風を感じることができます。ボートには広々とした暖房の効いた船室もあり、特に寒い季節に訪れた私たちにとっては、心地よい温かさがありがたかったです。ボートは美しい大鳴門橋を越え、本州と四国を繋ぐこの巨大な橋の下を通り過ぎます。その後、いよいよ渦潮に近づくと、スタッフの指示に従い左側に移動して、下の水面をじっくりと見下ろしました。
そこで目の前に広がったのは、渦潮ができる瞬間の迫力ある光景です。海流が一旦止まり、次に水が渦を巻いて急激に渦巻きながら下へと流れていく様子はまるで大きな排水口に水が吸い込まれるようで、自然の力強さを感じることができます。渦潮は迫力満点で、間近で見ることができるのはまさに貴重な体験であり、世界中でも限られた場所でしか見ることができない自然現象です。
このうずしおクルーズは、私たちの旅の締めくくりとして素晴らしいハイライトとなり、自然の美しさと力強さを深く感じることができました。最後に、この壮大な自然現象を目にしたことで、私たちの旅の記憶は一層鮮明になり、この地の魅力をさらに強く実感しました。