大阪発、和歌山と徳島を巡る旅：山と海がつなぐサステナブルツーリズム

旅は高野山から始まります。弘法大師（空海）が西暦819年に開いた真言宗の聖地であるこの町は、現代的な設備も取り入れつつ、その神聖な雰囲気を保ち続けています。宿泊した「恵光院」では、静かな環境と洗練された快適さが心地よい宿坊体験を提供してくれます。

ここでは心に響くさまざまなお勤めに参加できます。真言宗特有の瞑想「阿字観」の時間には、英語ガイドによる説明を受けながら、静寂の中で心を落ち着かせ、じっくりと自身を見つめることができます。また、「奥の院ナイトツアー」は、ランタンの柔らかな光の中でガイドが墓地の歴史と意義を説明する特別な体験です。

朝のお勤めや護摩行の儀式も見逃せません。蝋燭の明かりの中で行われる護摩行は、僧侶たちが祈りを捧げ、浄化の力を持つとされる炎が高く燃え上がる様子が印象的です。

食事は精進料理で、彩り豊かな野菜天ぷらやキノコ鍋など工夫を凝らしたお膳が提供されます。高野山ケーブルカーからの眺めは、この霊的な地への導入にふさわしい景観を楽しめます。

高野山の静かな山々を後にし、南海フェリーで和歌山港から徳島港へ渡り、鳴門を訪れました。鳴門海峡で発生する巨大な渦である「鳴門のうずしお」は瀬戸内海と紀伊水道の潮位差による強い潮流が生む世界有数の自然現象です。

観潮船に乗ると、鳴門大橋の下でうねる大きな渦潮を間近で体感できます。その迫力と自然の力には圧倒されるばかりです。さらに、鳴門公園の展望台からは、渦を生み出す海流の絶景を一望できます。

地元の海産物もぜひ味わいたいポイントです。「寿し辰」では、捕れたばかりの新鮮な寿司を楽しめます。渦潮の激しい水流の中で育った魚たちは特に身が引き締まり、歯ごたえと風味豊かな刺身となるのです。

最後の目的地は徳島県上勝町。2003年に「ゼロ・ウェイスト」を宣言したこの小さな町は、廃棄物の発生抑制や資源循環を重視した取り組みにより、持続可能な暮らしのモデルケースとなっています。

ゼロ・ウェイストアクションホテル 「HOTEL WHY」では、宿泊を通じて「ごみ」について楽しく考え、行動する機会を育んでいます。再利用可能なアメニティからアップサイクル素材を使用したインテリアまで、すべての細部にサステナビリティへのこだわりが感じられます。チェックイン時には自分の使う分だけ石鹸を切り取るユニークな体験も。また朝食には、同じく「ゼロ・ウェイスト」をテーマにした醸造所「RISE＆WISE Brewing Co.」（詳細は後述）が作るグラノーラ（ヨーグルト付）やスープ、地元産のフレッシュサラダ、ベーグルが提供されます。

注目のアクティビティはチェックイン時の施設案内ツアー「STUDY WHY」とチェックアウト時の「分別体験」です。知識豊富なスタッフが、再生できないごみ（焼却、埋立てごみ）を極限まで減らすための徹底した分別方法を説明してくれます。

上勝町の地元の飲食スポット巡りでは、交通手段として地元住民によるボランティアタクシーサービスが活躍します。上勝には英語の標識がなく、山道も多いため、地元に精通した住民が運転するボランティアタクシーをお勧めします。

タクシーで向かったのは地元の旬の素材を活かしたコース料理が楽しめるイタリアンレストラン「ペルトナーレ」。オープンキッチンでシェフが腕を振るうところを間近で見ながら、洗練されたコース料理を楽しめます。

翌朝には地元のお茶生産者を訪問し、上勝阿波晩茶の飲み比べ体験を行いました。このお茶は上勝町で伝統的に作られているもので、乳酸発酵した爽やかな味が特徴。生産する農家によって味や風味が微妙に異なり、体験では複数の生産農家のお茶を飲み比べることで、地域の文化を学ぶことができました。収穫からパッケージまでの製茶の過程を学び、地元農家が育てたお茶をおいしくいただくことができます。

「RISE & WIN Brewing Co.」では、地元で作られたクラフトビールが量り売りされ、施設自体もリサイクル素材で建設されているという革新的なサステナビリティの取り組みに触れることができました。店内では地元の製品やアップサイクル商品も展示され、町の創意工夫が伝わってきます。

大阪から出発し、和歌山、徳島を巡るこの旅では、単に景色を楽しむだけではなく、日本の自然美、文化、そして持続可能な取り組みに触れる体験ができます。高野山の精神的な静寂、鳴門の迫力あるうず潮、そして上勝町のエコ意識あふれる暮らし—この旅は、心に深く刻まれる素晴らしい経験となるでしょう。