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【和歌山県】世界遺産、熊野古道の神秘を巡る旅

【和歌山県】世界遺産、熊野古道の神秘を巡る旅

最終更新

力強い大地と深い森、雄大な海。和歌山県南部の熊野エリアには、原初の神々が宿る圧倒的な自然が今も息づいています。その中心となるのが熊野三山と呼ばれる3つの神社と、そこへと続く祈りの道、熊野古道。
古来、日本には山は神や先祖の霊が宿る神聖な場所という考え方があります。なかでも、深山の霊場である熊野は、訪れると心魂が蘇り、新しい気持ちになるといわれる特別な場。そんな熊野へと通じる道は「蘇りの道」とも信じられてきました。
今回紹介するのは、そんな過去と現在を結ぶ大自然のパワーを感じながら、熊野速玉大社とその摂社や熊野古道をガイドとともに巡り、さらに熊野速玉大社へも訪れる旅。世界遺産登録から20周年を迎えた聖地を訪ね、身も心もリセットしてみませんか?

目次

DAY1

7:40 JR大阪駅をスタート!

旅のはじまりはJR大阪駅。阪和線・紀勢本線で新宮駅までの電車旅を楽しみましょう。
大阪を離れるにつれ、車窓の景色もどんどん変化。みかん畑の中を縫うように走行したかと思えばユニークなカエルを模した橋が現れ、その先にはキラキラと水面が輝く海が広がったりと、南に向かうにつれ車窓にのどかな風景が広がり、ゆったりとした気分に。

さらに紀伊半島を回り込むと、南紀熊野ジオパークに認定されたエリアに入り、リアス式海岸と太平洋が織りなすさまざまな表情が楽しめるようになります。なかでも本州最南端の町、串本では大小40余の岩柱が杭のように規則的にそそり立つ名勝、橋杭岩は圧巻の見どころ。黒潮の海が作り出した造形美に、大自然の神秘を感じずにはいられません。

弘法大師(空海)が立てたという伝説が残る「橋杭岩」

弘法大師(空海)が立てたという伝説が残る「橋杭岩」

12:00 「新宮世界遺産3社巡りガイドウォーク」で世界遺産をぐるり探訪!

古くから熊野三山の神を祀る阿須賀神社。社殿背後には御神体である蓬莱山がそびえている

古くから熊野三山の神を祀る阿須賀神社。社殿背後には御神体である蓬莱山がそびえている

車窓の向こうに広がる美しい景色を眺める、贅沢なひとときを過ごしたのちにたどり着いたJR新宮駅。今回参加する「新宮世界遺産3社巡りガイドウォーク」は、ここから目と鼻の先にある観光協会前をスタートし、語り部さんの案内で新宮市内の世界遺産を巡る旅へと出かけます。

新宮の世界遺産のうち、熊野三山の一社である熊野速玉大社とその摂社・神倉神社、熊野古道中辺路の阿須賀王子跡である阿須賀神社を巡礼する「3社巡り」を中心に、コースは自由にアレンジ可能です。

熊野三山の一社である世界遺産・熊野速玉大社へ

仲之町商店街のアーケードを抜けてしばらく歩くと、熊野速玉大社へと辿り着きます。表参道の大鳥居前にかかる朱塗りの下馬橋を渡るとその先は御神域。あたりの凛とした空気に導かれるように気持ちが引き締まっていきます。

境内には熊野御幸で訪れた歴代上皇らの名前を記した碑があり、訪れた回数も記されています。最も多いのが33回の後白河上皇。交通が発達していなかった古の時代に足繁く通ったということからも、熊野が魅力的な御幸地であったことがわかります。

ほかにも敷地内には勝利を導く神を祀る八咫烏神社や新宮を代表する文人・佐藤春夫の句碑など、見どころがたくさん。樹齢約1000年にものぼる御神木の梛の大樹は、古来から道中安全を祈り、葉を懐中に納めてお参りすることが習わしとされた古のラッキーチャーム。落ち葉の中から梛の葉を見つけられたら幸運が舞い込むかもしれません。

広々とした境内の神門をくぐると拝殿があり、ここから参拝する

広々とした境内の神門をくぐると拝殿があり、ここから参拝する

武将の平重盛が手植えしたといわれる御神木の梛の木

武将の平重盛が手植えしたといわれる御神木の梛の木

熊野信仰発祥の地、神倉神社に参拝

続いて訪れたのは神倉神社。こちらでぜひ見ておきたいのは御神体であるゴトビキ岩と呼ばれる巨大な岩。熊野の神が熊野三山として祀られる以前に初めて地上に降臨したと言われるパワースポットです。
この岩のある拝殿付近に辿りつくには急峻な自然石でできた538段の石段の攻略が必須。思わず足がすくみますが、急勾配なのは最初の踊り場まで。以降はややゆるやかになるため、足元に注意しながらゆっくり登っても20〜30分程で拝殿へと辿り着きます。

拝殿と共に迎えてくれるゴトビキ岩は長く信仰の対象となってきたことが頷ける圧倒的な存在感。目にした瞬間、感動が胸に迫りました。また付近の標高は89mほど。新宮のまちからその先にある海までを見晴らす絶景も楽しみどころのひとつです。

自然の神秘を感じる巨石。ゴトビキはヒキガエルを意味する方言に由来している

自然の神秘を感じる巨石。ゴトビキはヒキガエルを意味する方言に由来している

新宮市街地やその先に広がる海を見渡すことができる

新宮市街地やその先に広がる海を見渡すことができる

基本情報

名称
新宮世界遺産3社巡りガイドウォーク
URL
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17:12 「旅館あづまや」で熊野詣の湯垢離場として栄えた日本最古の湯で旅の疲れをリセット

落ち着いた佇まいが温泉と共に心身を癒やしてくれる

落ち着いた佇まいが温泉と共に心身を癒やしてくれる

15時55分新宮駅発のバスで一路本宮町へ。熊野本宮の温泉郷には、それぞれ個性の異なる3つの名湯が揃っています。そのうちひときわレトロな温泉情緒を漂わせる「湯の峰温泉」は、開湯から約1800年の歴史を誇る「日本最古の湯」。

温泉宿の間を流れる川の湯けむりや川に作られた湯筒で野菜や卵を茹でる光景が日常的に見られます。かつて熊野を詣でる人びとがここに立ち寄り、疲れを癒やすと同時に身を清めてお参りしたという湯垢離場。その癒やしのパワーをしっかりと感じたいものです。

温泉が流れ込む川は湯気がたちのぼり夕暮れ時はさらに湯の町風情たっぷり

温泉が流れ込む川は湯気がたちのぼり夕暮れ時はさらに湯の町風情たっぷり

宿泊する「旅館あづまや」は江戸中期に創業した由緒ある温泉宿。作家の高浜虚子をはじめ国内外の文人や芸術家に愛されてきた和の佇まいが迎えてくれます。

お宿のお風呂は、やはり温泉。自家源泉から湧く新鮮な湯を使うためか、湯の肌触りが驚くほど柔らか。良質の温泉の証、湯の花が湯船に浮かび、立ちのぼる硫黄の香りと共に心身がほどけていくのがわかります。また加水なしの源泉浴や、日本に数軒しかない高温蒸気を利用した稀少な温泉蒸し風呂も。天然のミストを浴びながら文字どおり体がじわりと蒸されていくような不思議な感覚は初の体験でした。
ちなみに川の谷合いに湧く「つぼ湯」は唯一無二の「入浴できる世界遺産」。夕食後や早朝に外湯に出かけるのも湯処ならではの楽しみ方です。

趣ある槇風呂、風情ある日本庭園の露天と、それぞれの風情が楽しめます

趣ある槇風呂、風情ある日本庭園の露天と、それぞれの風情が楽しめます

湯筒で野菜を茹でていたように、古来から食材を温泉で茹でることが生活の一部になっていた湯の峰。そのノウハウを生かした温泉料理のひとつが「美熊野牛のしゃぶしゃぶ」です。

食べ物や飲み水から生育環境すべてにこだわって大切に育てられた美熊野牛。そのままでも味の濃いこの肉を、やや厚切りにカットして贅沢にいただきます。温泉を用いた鍋だしにくぐらせることで厚みがあっても肉質が柔らかに。自家製の特製ポン酢をつけて頬張ると、お肉の旨みが口いっぱいに広がり、しばらく余韻に浸っていたくなります。ほかにも湯豆腐や茶碗蒸し、だしを使う料理全般に温泉が使われており、朝食でも特製温泉粥が楽しめます。

紀南地方にしか流通していない稀少な美熊野牛で温泉しゃぶしゃぶを堪能!

紀南地方にしか流通していない稀少な美熊野牛で温泉しゃぶしゃぶを堪能!

基本情報

名称
旅館あづまや
住所
〒647-1732 和歌山県田辺市本宮町湯の峰122
TEL
0735-42-0012
交通
南紀田辺ICから車で90分、JR紀伊田辺駅からバスで約100分、JR新宮駅からバスで約70分
時間
チェックイン13:00/チェックアウト10:00
料金
1泊2食 18,300円〜
休み
月2回不定休
URL
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DAY2

10:00 「世界遺産&日本遺産を体感 ガイドと歩く・熊野古道高野坂」に参加、海を望む熊野古道「高野坂」を体験!

スニーカーでも十分な、いわば熊野古道初級コース。気楽に古道歩きが体験できる

スニーカーでも十分な、いわば熊野古道初級コース。気楽に古道歩きが体験できる

翌朝は8時31分発のバスで再び新宮駅に戻り、熊野古道体験に挑戦!

今回歩いた「高野坂」は、熊野速玉大社から熊野那智大社へと巡礼する人たちが歩いた中辺路ルートの一部。熊野古道と聞くと、深い山の中を分け入るイメージがありますが、ここは熊野古道中辺路の中で唯一海の見える道。木々の間から大海原を見たかと思えば苔むした石畳が現われたりと、古道の雰囲気と熊野灘の眺めが両方楽しめるコースといえます。

かつて海の水で身を清める「塩垢離場」だった王子ヶ浜海岸

かつて海の水で身を清める「塩垢離場」だった王子ヶ浜海岸

沿道には古道脇の五輪塔や石仏など、約1.5kmの短い道のりにたくさんの見どころが凝縮。勾配もゆるやかなため軽装でも歩けたりと、まさにいいとこ取り。ガイドさんの話を聞きながら歩いているうちに、あっという間にゴールまで辿り着きました。

かつて鯨漁が栄えていた頃に見張り台であったという鯨山見跡は絶景ポイント

かつて鯨漁が栄えていた頃に見張り台であったという鯨山見跡は絶景ポイント

苔むした石畳が続く道を下るともうゴールは目前!

苔むした石畳が続く道を下るともうゴールは目前!

基本情報

名称
世界遺産&日本遺産を体感 ガイドと歩く・熊野古道高野坂
URL
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12:30 発酵で生まれる絶品珍味! 名物なれ鮓をいただく

カウンター4席と座敷のほか、テーブル席の個室もある

カウンター4席と座敷のほか、テーブル席の個室もある

お昼に訪れたのは新宮の郷土料理、なれ鮓の名店「東宝茶屋」。

「好きな人はよく熟れて(なれて)いるのが好き。だんだん浅いのが頼りなくなるんです」とご主人。熟れとはどういう状態かと言うと、発酵度合いを意味します。そう、なれ鮓は酢を使わず乳酸発酵させていただくお寿司なのです。

「なれずし」というと県内中部などではサバが多いのですが、新宮ではもともとは山間の川で獲れるアユを使った保存食だったそう。今では新宮ではサンマが主流になっていますが、東宝茶屋では今も秋に熊野川支流で獲れる天然の落ちアユを仕入れ、当時の味を守っています。

手前がサンマ、奥がアユ。丸い器が30年物。ほかにサバやアマゴもある

手前がサンマ、奥がアユ。丸い器が30年物。ほかにサバやアマゴもある

発酵というだけあって、ひと口食べて感じるのはチーズのような芳醇な風味。酢を使わず発酵させることで生まれる乳酸の酸味と熟成した魚の旨みが程よく調和しています。1ヵ月ほど寝かせたものだといいますが、クセがなく魚の臭みを感じないことにも驚かされました。
新宮の豊かな自然が育んだアユ、さらにそれを乳酸菌によって発酵させて保存する。自然と人間の知恵が作り出した美味に舌鼓を打つのでした。

基本情報

名称
紀州名産 本なれ鮓本舗 東宝茶屋
住所
〒647-0017 和歌山県新宮市横町2-2-12
TEL
0735-22-2843
交通
JR新宮駅から徒歩10分
時間
11:30〜14:00(LO13:30)、17:00〜22:00(LO21:30)※予約優先
料金
本なれ鮓(サンマ、アユ)各1,650円、30年物珍味本なれ鮓 1,870円
休み
木曜+臨時休業あり

15:00 熊野那智大社と日本一の滝に感動!

日本三大名瀑のひとつに名を連ねる那智の滝。その落差は133mと日本一!

日本三大名瀑のひとつに名を連ねる那智の滝。その落差は133mと日本一!

お腹を満たした後は、14時のバスに乗って那智山へと向かいます。この山の中腹に位置するのが熊野三山の一社、熊野那智大社。隣接する那智山青岸渡寺とともに現在も厚い信仰を集めています。「那智山」バス停で降りた後、463段の石段を上っていくと朱塗りの6棟の社殿がお出迎え。その美しい佇まいと少し冷えた空気が心まで澄ませてくれるようです。

礼殿に参った後に境内を散策し、神武天皇を導いた三本足の烏「八咫烏」が大任を終えて石になったといわれる烏石や、樹齢850年の大楠などを見学。御神木でもある大楠は根元に空洞があり、手に護摩木や絵馬を持ってくぐることで無病息災を願う「胎内くぐり」を体験できます。

主祭神である熊野夫須美大神は、現世利益を授ける千手観音の権現とされています

主祭神である熊野夫須美大神は、現世利益を授ける千手観音の権現とされています

無病息災の願いを込めて大楠の胎内くぐりに挑戦!

無病息災の願いを込めて大楠の胎内くぐりに挑戦!

熊野那智大社の別宮である飛瀧神社の御神体として崇められている那智の滝は、48滝あるとされる那智山の滝の中でもとりわけ大きな落差で、別名「一の滝」とも呼ばれます。その落差は133mあり落下する水量は毎秒1トンほど。近づくとその水量を感じる轟音が響き、迫力の飛沫を感じることができます。

さらに滝に近づくには「御瀧拝所舞台」がおすすめです。御瀧拝所舞台に入ると延命長寿の水とも伝えられる滝壺の水を飲むことができ、その水を用いて運勢を占うおみくじもあります。一帯に漂う凛とした空気と聖なる滝のしぶきに抱かれると、心も身体も浄化されていくのを感じるのです。

那智御瀧を最も近い真正面で拝観できる観覧舞台「御瀧拝所舞台」は大人300円、小中学生200円で入場可能

那智御瀧を最も近い真正面で拝観できる観覧舞台「御瀧拝所舞台」は大人300円、小中学生200円で入場可能

基本情報

名称
熊野那智大社 飛瀧神社(那智御瀧)
住所
〒649-5301 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山1
TEL
0735-55-0321
交通
JR紀伊勝浦駅からバスで約30分
時間
授与所7:30〜16:30
休み
無休
料金
参拝無料
URL
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移動は悠遊フリー乗車券を使って楽々!

那智エリアの移動時に路線バスを利用する際はぜひ購入しておきたい

那智エリアの移動時に路線バスを利用する際はぜひ購入しておきたい

世界遺産熊野三山や熊野古道の散策に、格安で便利な「フリー乗車券」を販売中。今回の旅はこちらのパスを利用。エリア内の熊野御坊南海バスの路線バスが乗り降り自由。1日券から3日券まであるので、滞在日数に合わせて購入できます。

基本情報

名称
悠遊フリー乗車券
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まとめ

新宮での散策を中心に2日かけて熊野エリアの聖地をくまなく巡った今回の旅。巨石や大滝をはじめとする大迫力の自然造形を目の当たりにし、自然崇拝から生まれた熊野信仰の一端を実感することができました。何より古道歩きや聖地巡礼を通じて、心が洗われたような気分はまさに「蘇り」と言って過言ではありません。この不思議な感覚は言葉で聞くよりも、ぜひ実際に訪れて体感してみてください。

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