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何万年という長い年月をかけて、砂と風によって創られた日本最大級の砂丘「鳥取砂丘」をはじめとする山陰海岸ジオパーク。まずはこの鳥取砂丘を訪れ、夜は温泉でホッとひと息。2日目はいよいよ浦富海岸へ。山陰海岸国立公園内に位置し、国の天然記念物にも指定される学術的にも貴重な海岸で、遊覧船に乗り、海上から日本海の荒波と風雪が作り上げた奇岩、巨岩を鑑賞、さらには海と大地の自然館で山陰海岸ユネスコ世界ジオパークの魅力を深掘り。多様な地形が織りなす美しくも力強い山陰ならではの自然を体感する旅に出かけませんか。
目次
大阪市内でレンタカーを借りて、旅をスタート。約2時間45分ほどのドライブで最初の訪問地「山陰海岸国立公園 鳥取砂丘ビジターセンター」に到着。
レンタカーは「山陰海岸国立公園 鳥取砂丘ビジターセンター」の目の前にある鳥取砂丘駐車場へ。乗用車500円(24時間)
長いドライブを終えて最初に訪れるのは、砂丘をよく知るガイドが常駐し、観光案内をしてくれるビジターセンターから。駐車場で車を下りて、海の気配を感じながら大きく深呼吸します。
こちらは、多彩な展示物から鳥取砂丘のなりたち、そこに生きる植物や動物、砂丘と人びとの営みを学ぶことができます。いきもの模型はいまにも動き出しそうで思わず見入ってしまいました。
「いきものゾーン」では砂丘に生きる植物や動物たちを標本や模型などで展示
続いて時間や季節とともに姿を変えていく砂丘の景観を大迫力で体感することができるミニシアター「すなくら」で映像観賞。刻々と変化する砂丘の様子に、これから訪れる鳥取砂丘への期待度も高まります。屋内休憩スペースには、吹き抜けを活かした長さ4mの火山灰層はぎとり標本があるので、こちらもしっかりチェックします。
「すなくら」の壁面は実際の砂丘でできた風紋から型をとったもので、触ることも可能
また、こちらは足洗い場やタオルの自動販売機も完備。鳥取砂丘を歩くと靴に砂が入ってくることもあるので、帰りに立ち寄ろうと思いました。
砂丘を一望することができる眺望テラスで、その圧巻の広さに感動!
続いて「砂丘センター 見晴らしの丘」へ。小高い場所にある、おみやげショップ、レストラン、展望台が集結した複合施設です。お目当ては、SNSで話題の砂丘海鮮丼(小鉢、味噌汁付き)!見た目も華やかな海鮮丼に、思わず笑みがこぼれてしまいます。旬の海の幸をしっかり堪能してお腹も心も大満足です!
「まるで海のメリーゴーランド!」と話題の海鮮丼は10種以上の海の幸を贅沢に載せた逸品
食後は最上階にある眺望テラスへ立ち寄って、これから向かう鳥取砂丘の全体を見渡します。想像以上に広大な砂丘とその向こうに広がる日本海の絶景に、期待度も最高潮に!
リフトに揺られ、のんびり移動するのは癒しのひととき
「砂丘センター見晴らしの丘」から鳥取砂丘には、観光リフトで向かいます。
「砂丘センター見晴らしの丘」の建物の外にある自動販売機で乗車券を購入、坂を下った場所にある乗り場へ移動します。
木々に囲まれたリフトでゆっくりと下降していくと、森の中を空中散歩している気分に。所要時間は約5分、降り場に到着すると、いよいよ鳥取砂丘の入口に到着です。
国の天然記念物であり特別保護区にも指定される日本最大級の砂丘
山陰海岸国立公園内、東西約16km、南北約2kmと日本最大級の広さを誇る鳥取砂丘。日本海に面し、全国の海岸が開発や護岸工事で姿を変えるなか、太古から変わらぬ雄大な景観美を望むことができます。
まず目指したいのは、小高い砂の丘「馬の背」。足が沈んで行く砂丘を歩くのはなかなか大変で、途中挫けそうになりながらも斜面を前に進んでいきます。高さ約47mある急斜面を登り切ると、目の前には広大な日本海! 大変な思いをしてたどり着いた甲斐もあるというものです。
砂丘の中央部分にはオアシスと呼ばれる湧水の水たまりもありました。約6万年前の火山灰がむき出しになった火山灰露出地、約20mの深さがある追後スリバチなどを探検気分でめぐってみるのもおすすめです。
風で砂が動くことによってつくりだされる風紋。足跡が少ない早朝は特に美しい
高い丘にある砂丘「馬の背」からは水平線に沈む夕日が眺められる
今回は、昼間の訪問となりましたが、足跡が少ない早朝や日が暮れていく様子を眺めることができる夕方の景色もすばらしいとのことなので、この景色も見られるよう、必ず再訪しようと誓って鳥取砂丘を後にしました。
(C)鳥取砂丘砂の美術館
2024年4月19日~2025年1月5日は砂で世界旅行・フランス編を展示
(C)鳥取砂丘砂の美術館
砂と水だけで作ったとは思えない繊細な造形美
砂丘の雄大さに感動したあとは、レンタカーで3分ほど移動。砂の彫刻作品を展示する世界初の美術館「鳥取砂丘 砂の美術館」へ。
2006年の開館以降、「砂で世界旅行」をコンセプトに、ほぼ毎年テーマを替えて砂像を展示。驚きなのは、のりや凝固剤は使用せず、鳥取砂丘の砂と水だけでつくられていること。展示が終わると一度崩して元の砂に戻し、同じ砂を使って新たな作品をつくるので、今ある作品は限られた期間しか出合えない一期一会のアートです。目の前にある作品に出合えたことの奇跡に感謝したくなります。
15回目となる今期は世界12カ国20名の砂像彫刻家が集まり、フランスをテーマに作品を制作。ヴェルサイユ宮殿に代表される貴族文化や建築、百年戦争やフランス革命など激動の歴史を砂で表現しています。人びとの表情、髪の1本まで砂で繊細に形作られ、その超絶技巧は近くで見るほど感動します。
昭和初期に再建された木造3階建て
砂像アートに感動した後は、レンタカーで約20分、この日の宿へ移動。
清流・蒲生川のほとり、1200年前に開湯した岩井温泉街にある老舗旅館。旅館の創業は江戸時代、創業以来400年、源泉掛け流しを守り続けています。
大浴場は男女ともに総ヒノキ造り。ほか庭園露天風呂(11~3月は閉鎖)、貸切露天風呂、プライベートサウナまで揃います。朝のドライブから砂丘散策と、アクティブに動いた旅の一日目の疲れが、温泉に浸かるとゆるりとほどけていくようです。
客室は風情ある数寄屋造りの和室、和室にベッドを備えた和洋室、専用露天風呂付きの特別室の3タイプ
泉質はカルシウム・ナトリウムー硫酸塩泉。なめらかな湯がしっとりやわらかい肌に導いてくれる
料理も見事で、地元・因幡地方の山海の幸旬の食材が堪能できる構成です。たとえば魚は岩美町の網代港でその日に買い付け、ステーキなどの肉料理は但馬の銘牛・田村牛を使用。アワビ付きの会席は、新鮮なアワビの踊り焼きが主役で、水槽から活きたままで焼き網へ。鮮度がいいからこそ実現できる料理でもてなしてくれます。
食を存分に堪能して、幸せな1日を締めくくりました。
食事メニューは海の幸、山の幸、旬の食材を一度に味わえる会席3種と旬の特産品を満喫できる季節の限定会席の計4種
2日目は宿を出発して約15分。今回の旅のメインイベント「浦富海岸 島巡り遊覧船」へ!
水深25mの透明度を誇る岩美ブルーの海を間近に感じて
日本海の荒波と風雪がつくり上げた、大小さまざまな島が連なる浦富海岸。山陰海岸ジオパークを海から楽しむことができる遊覧船でのクルージングは、今回の旅の一番のお楽しみ!遊覧船に乗れば、奇岩・巨岩を間近に感じられる、迫力あるクルージングを楽しむことができます。
見どころは洞門の頂上に松が生えた千貫松島、粗い粒の砂浜、円石の磯浜、連続する波食棚が観察できる城原海岸、入り江が複雑な鴨ヶ磯など多数。
船上クルーズだからこそ見ることができる巨岩や奇岩の数々に圧倒される
透明度の高く独特なグリーンに輝く浦富海岸の海を船上から確認!
遊覧船は中央に運転席があり船長自らガイドしてくれるのも楽しく、解説を聞きながら間近に見る巨岩や奇岩は、想像以上の迫力で、陸上からとは違った景観に感動もひとしお。
周遊時間は約40分、本州屈指の透明度を誇り、エメラルドグリーンとコバルトブルーが混ざり合った岩美ブルーの海をしっかり満喫! その魅力の虜になるのでした。
遊覧船は95人乗り。客席はベンチシートで、後方には潮風を感じるデッキ席がある
船盛の刺身が豪華な海の幸定食。煮魚、フライ、汁物、香の物付き
続いては、遊覧船のインフォメーションに隣接する食事処でランチタイム。店内に足を踏み入れると大漁旗がはためいており、それだけで期待度も高まります。
人気は、旬の恵みを堪能できる海の幸定食。刺身、煮魚、フライと、魚介類をそれぞれに適した調理法で味わうことができます。汁物も貝汁、魚のアラ汁など、その時期一番おいしい魚介を使っているため、あらゆる形で旬の魚介を満喫することができると評判です。
客席はカウンター席、テーブル席、半個室、座敷があり計60席
鳥取名物として人気急上昇中なのが幻のエビと言われるモサエビ。3月~5月、9月~11月前半限定でしか提供できないため、モサエビ目当てに再訪することを誓うのでした。
展望広場から「千貫松島」を一望!
「お食事処あじろや」から海岸沿いをドライブ中、一旦車を降りて「千貫松島」が見渡せる絶景スポットへ。中国近畿連絡自然歩道として整備された少し急勾配の山道を5~10分ほど進みます。徐々に広がっていく視界に期待しつつ進むと、展望広場に到着。そびえる奇岩に松がしがみつく千貫松島と透明度の高い海を一望した瞬間、散策の疲れも吹き飛びました。
山陰海岸ジオパークについて学ぶことができる施設
ジオパークは地質遺産とそこに関わる生態系や人びとの暮らしを保全しながら教育や観光に活かす活動をしている地域です。日本ジオパークネットワークに認定されているのは47地域、そのうち山陰海岸ジオパークを含め10地域がユネスコ世界ジオパークに認定されています。続いて訪れるのは、山陰海岸ジオパークについて映像や資料など多彩な展示で紹介する施設です。
まずは近海に住む魚の水槽がお出迎え。展示室では、日本列島が大陸の一部だった時代から日本海形成に至るまでの経緯や、それに関わる火成岩類や地層など貴重な地形・地質遺産について資料や立体模型で詳しく解説しています。
近海に捕獲した魚を水槽で展示。常時40~50種ほど
沖合で生きたまま混獲されたダイオウイカの標本は迫力満点! 全長3mもあるその姿に、海の神秘を感じずにはいられません。3Dシアターでは「大地と海の物語」「神秘と生命の物語」「大地と人の物語」(上映時間約20分)を上映しているため、楽しみながら理解を深めていきます。
生き物のはく製が飾られた展示室
外国語を話せるスタッフもいるため解説をお願いできる
山陰海岸ジオパークに認定されている浦富海岸が見渡せる
旅の最後にもう一度山陰海岸の絶景を眺めたい、と立ち寄ったのが浦富海岸の最東端、兵庫県との県境近くにあるのが東浜展望所です。
俗化されていない素朴な陸上の集落、東浜から東漁港にかけて湾曲する白い砂浜、山陰海岸最大級の海食洞・龍神洞がある羽尾岬などが一望できます。また夕日の名所としても有名。中国山地の稜線と遙かなる水平線、大パノラマを眺めながら今回の旅の魅力を振り返ります。
国内最大級の鳥取砂丘と、手つかずの自然が残る山陰海岸。圧倒的なスケールの自然を目の前にすると、心身が浄化されるような心地よさがあります。数万年かけて育まれた自然美は人を癒やす効果も抜群。周辺にある砂丘やジオパークについて紹介する施設に立ち寄ることで、より理解も深まります。実際に訪れて、自然の偉大さを体感してみてはいかがでしょう。