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7品目の伝統工芸品を有する福井県。そのうち5品目の伝統工芸品を有する越前を訪れます。
今回の旅では1500年以上の歴史を有する越前和紙にふれ、伝統工芸士をはじめ女性職人が活躍する和紙製作所で和紙漉きを体験。さらに翌日は、越前からひと足のばして「めがねのまち」として注目を集めている鯖江へ。メガネフレーム国内生産9割を超える鯖江のメガネを、博物館の展示やマイサングラス作りを通して体感します。越前が誇る伝統工芸に触れる旅へ出かけましょう。
目次
福井県のものづくりに触れる旅の起点となるJR大阪駅から、まずは特別急行列車サンダーバードに乗って敦賀駅へ。その後ハピラインふくいに乗り換え武生駅で降りれば、次はバス移動。福井鉄道バス池田線の金山行きで和紙の里バス停で降り、約10分歩けば、最初の目的地である製紙所に到着します。
日本らしい瓦屋根の民家が立ち並ぶ一帯を抜けて、最初に訪れるのは、1946年創業の主に和菓子店の包み紙などを制作する柳瀬良三製紙所。「RYOZO」という名前とロゴが入ったのれんをくぐると和紙で作られた商品が目に飛び込み、心が高鳴ります。ここでは、コウゾなど原料を溶かした液体を簀桁(すけた)という道具で汲み上げて和紙を漉く、紙漉き体験など、歴史のある和紙づくりに触れることができます。
可憐な和紙製品に目を奪われていると、「こんにちは」の声とともに3代目の柳瀬京子さんが笑顔でお出迎え。長年和紙づくりに携わる職人から聞く和紙の説明はわかりやすく、質問にも丁寧に答えてくれます。説明後は、実際に製品を作る工房を見学。越前和紙は女性が漉き手を務めることが多く、この工房も柳瀬さん含め、女性が大活躍。実際に和紙づくりを行うスタッフの立ち姿は美しく、見ている側も気が引き締まります。和紙の材料や作る工程など、和紙の基本的な知識を学んだ後は、いよいよ紙漉き体験へ。
体験工房へと移動し、レンタルのエプロンと長靴を履いて、気分は和紙職人! 柳瀬さんの指導のもといよいよ体験スタートです。簀桁を水面と平行に持ち、原料を溶かした液体を汲み上げ上下に動かします。均一の厚さに仕上げていくのが意外と難しいですが、常に柳瀬さんが横でサポートしてくれるので、初心者でも安心。汲み上げて上下に動かす工程を繰り返し、なんとか紙漉きに成功しました。その後、金型で模様をつけ、脱水して乾かせば完成です。できあがった和紙は用意された紙筒に入れて持って帰ることができます。自分で漉いた、うずまきの模様入りのここでしかゲットできない和紙に喜びもひとしお。
柳瀬良三製紙所が作る扇子など和紙の小物も販売されているので、体験後はお土産探しも楽しめます。
製紙所を背に北上し、国道417号線で西へと向かうこと徒歩約20分。150年続く老舗の蕎麦店「森六」でランチをいただきます。
創業以来守り続けてきた伝統の製法で作られた蕎麦は、口に入れると蕎麦の香りが広がり、喉ごしも抜群です。それもそのはず、素材にもこだわり、ギッシリ中身が詰まっている高品質な福井産の在来種蕎麦を使用、丁寧に自家製粉しているそうです。そんな高品質な蕎麦の風味を最も美味しく味わえるようにと、その日の早朝から蕎麦を打ち、お客に提供するまでの時間と温度を徹底管理。また、せいろ用の十割で細切りと、おろしそば用のやや太めの二八そばの2種類を用意するなど、伝統工芸の町らしいこだわりようです。
昼食をすませた後は、県道198号線を南下し、百年通りを東へ歩いて15分の場所にある、越前和紙の関連施設が並ぶ和紙の里へ向かいます。
風情ある和紙の里通りの東側に建つ「紙の文化博物館」では、越前和紙の歴史を学ぶことができます。
入館して左側には、和紙づくりの工程を映像で紹介するコーナーが。午前中に体験した和紙づくりを思い出しながら、映像を見るとより理解度が上がります。そのほか、年表や歴史的資料などが並び、和紙と洋紙の違いを表組で紹介するなどさまざまな角度から和紙の魅力を感じることができます。別館では、奉書紙や鳥の子紙、局紙など約360点にも及ぶ和紙の展示に圧倒されます。定期的に行われる特別展は、越前和紙の魅力を活かした作品など、和紙の可能性が広げる展示が並ぶこともあり、驚きの連続です。
紙の文化博物館から、伝統家屋を眺めながら石畳の遊歩道を歩き西側へ。
20〜40分で気軽に和紙を使ったうちわや灯りづくり体験ができるパピルス館の併設ショップでは、書画用和紙や工芸用和紙、折り紙などの紙製品を販売。ブックカバーやペンなどの文具、イヤリングなどのファッションアイテム、コースターなどの生活用品ほか、扇子、ご朱印帳、マスクケースなど、1,000種以上も取り揃える品数に目移りしながらショッピングを大満喫。越前和紙のほか、全国の和紙産地のグッズもあり、お土産探しには事欠きません。
和紙の里バス停から福井鉄道バス南越線に乗り、バスに揺られて約25分、越前市役所前で降り、歩いて約7分の場所にある今回の宿「Echizen京よろず」へ。
2つの和洋室をはじめ、一棟貸しの薪ストーブがあるモダンな雰囲気の「別邸京よろず」と、3タイプのお部屋が用意されています。どの部屋も越前和紙や越前焼きなど伝統工芸品を設えていて、上質な和の雰囲気に癒やされつつ、ベッドやソファでゆったりとしたくつろぎの時間を堪能できます。
小休止した後は、お待ちかねの晩ごはん。老舗料亭の確かな技と、越前ならではの食材が織りなす、至極の和食コースに舌鼓。越前和紙や越前焼きなど、地域を代表する工芸品がしつらえや食器に取り入れられ、旬の食材を活かした繊細な味わいを、五感を通して楽しめます。2日目に向けて英気を養うため、日本の工芸品が並ぶ空間の中、美食に酔いしれます。
2日目の目的地、メガネの町、鯖江へのアクセスはとても簡単。宿から徒歩10分のハピラインふくい武生駅から電車に乗り5分で鯖江に到着します。メガネフレームの国内生産90%以上を誇る鯖江の町を散策しましょう。
ハピラインふくい鯖江駅から、次の目的地「めがねミュージアム」までの道路は「メガネストリート」といわれ、ユニークな仕掛けが盛りだくさん。線路をくぐるための地下道を通ると、階段にはいくつものメガネが彫刻されており、地下道をくぐった先にある車止めにはメガネがかけられていて、可愛いキャラクターのように見えます。そのほかにも、メガネ型のベンチやマンホール、案内プレートなど、ひと目見ればわかるものから、よく探さないとわからない隠れメガネまで、遊び心あふれる仕掛けを楽しみながら次の目的地を目指しましょう。
メガネストリートを歩き、「めがねミュージアム」に到着。夢中でメガネの仕掛けを探しながら歩いたため、2階にある「MUSEUM CAFE」でひと休み。
越前市の自家焙煎珈琲店がMUSEUM CAFE用に厳選したコーヒーを注文し、地元のスイーツショップが作るケーキやゼリーなどと合わせていただきます。
ひと息ついたら、1階の「めがね博物館」へ。メガネづくりの道具など100余年の歴史を物語る貴重な資料や、日本の著名人が愛用したメガネを展示する「有名人めがねコレクション」に心ときめきます。そのほか、福井県内にあるメガネ関連会社約50社の最新モデルを展示販売するショップや体験工房(要予約)など見どころ満載です。
「めがねミュージアム」から駅の方面へと戻り、国道8号線を約8分北へと歩いた先にある釜めし専門店で昼食を。
福井県産コシヒカリを100%使用し、地元で獲れた新鮮な魚介や旬の食材をふんだんに使っている釜めしは、注文を受けてから炊き上げるため、熱々ふっくらのご飯と、食材本来の味わいが口中に広がります。越前がにや焼きさばなど福井名物をはじめ、春は鯛やたけのこ、夏はあゆやうなぎ、秋は松茸や焼鮭といくら、冬はせいこ蟹や牡蠣など、四季折々の食材を使った限定メニューなど何度も訪れたくなる品揃えです。秘伝のだしで炊き上げた、香り高い釜めしを味わいます。
ランチ後、14時発の神明駅方面つつじバスに乗るために、鯖江駅へ。バスに約20分乗り、ふくしん神明支店前バス停で降りて約12分歩いたところが次の目的地。
ここは、1953年からサングラスのレンズ製造や自社ブランドを企画製造する乾レンズが手がけるLens Park(レンズパーク)で、自分好みのマイサングラスを作ることができます。
まずは、本当にサングラスが目を守られているのか実験を交えながらレンズについてお勉強。次に実際のサングラス作りの工場を見学して、普段は見ることができない現場に潜入します。そして待望のマイサングラス作り体験に。有名ブランドにも使用されているレンズ約300種類から、持参したメガネフレームに合うお気に入りのレンズを選ぶ時はワクワクが止まりません。体験後は、ソフトクリームまたはこだわりのコーヒーを無料で提供してくれるうれしいサービスも。
1500年以上の歴史を持つ越前和紙と国内有数の産地として知られる鯖江のメガネをめぐる旅。
ツアーに参加することで、普段はお目にかかれない工房や工場の裏側や、職人から直接レクチャーを受ける貴重な体験ができ、関連施設へ立ち寄ることで、越前和紙や鯖江のメガネについてより深く知ることができます。
ほかにも越前漆器や越前打刃物、越前焼、越前箪笥など越前にはさまざまな伝統工芸があり、何度訪れても楽しめるエリアです。ぜひ越前に訪れてみてはいかがでしょう。