京都府乙訓地域の竹細工や福井県の越前打刃物など伝統工芸を学ぶ1泊2日の旅(京都府~福井県)

京都府乙訓地域の竹細工や福井県の越前打刃物など伝統工芸を学ぶ1泊2日の旅(京都府~福井県)

2024年02月28日

The KANSAI Guide

日本文化を学ぶ最良の方法は実際に体験してみることです。初めて日本を訪れる人も、旅に慣れた人も、本物の日本文化を味わえる体験をぜひ探してみてください。日本の伝統工芸に挑戦したり、現代的なサステナビリティへの取り組みにふれたり、人里離れた場所での郷土料理を経験したりすることで、多くの人が見過ごしている日本の一面を発見することができます。私たちは普通以上の観光体験を求め、京都府福井県滋賀県を巡る2日間の旅をしました。この旅が読者にとって一生に一度の冒険に乗り出すきっかけになることを願っています。

Shop&Gallery竹生園(京都府長岡京市)

私たちは京都市から車で簡単にアクセスできる長岡京市にあるShop&Gallery竹生園から旅を始めました。Shop&Gallery竹生園は竹に関連するショップやギャラリー、工房が一体となったユニークな施設です。ショールームでは、Shop&Gallery竹生園が所有する竹林から環境を配慮した手法で伐採された竹で作られたコップや花器、茶道具などが展示されています。それぞれの作品には、アリが穴を開けたかのような「不完全さ」があり、自然の魅力を引き立てています。また、施設の見学では、竹林は通常110~120年ごとにいっせいに枯れ、自然に再生するという驚くべき周期をもつことなど多くのことが学べました。

生竹の箸の製作準備。

生竹の箸の製作準備。

最後の仕上げの様子。

最後の仕上げの様子。

竹生園のスタッフが竹の特性について語る。

竹生園のスタッフが竹の特性について語る。

Shop&Gallery竹生園。

Shop&Gallery竹生園。

竹生園の内装は、竹材の自然な温かみを感じさせる。

竹生園の内装は、竹材の自然な温かみを感じさせる。

竹について学んだことで、これから作る竹箸への興味が一層深まりました。竹箸作り体験の道具は用意されており、まずはカンナを使って、特徴的な模様のある竹の表皮だけを残して、ほかの表面を滑らかにします。その後、紙やすりを使って握り具合を整え、先端を丸く整えます。最後に、箸の上部に好みの柄などを加えてます。この体験で作り手の個性があふれるオンリーワンのおみやげが完成しました。

カンナで削られた竹の箸は、世界にひとつだけの京都土産になる。

カンナで削られた竹の箸は、世界にひとつだけの京都土産になる。

錦水亭(京都府長岡京市)

Shop&Gallery竹生園は、明治14年(1881)創業の料亭、錦水亭の建物の一つにある施設です。私たちは錦水亭の茶室を思わせる数寄屋造りのお座敷で昼食を楽しみました。錦水亭の名物はタケノコ料理ということに竹との縁を感じます。昼食はご飯、エビ、卵焼き、野菜、かまぼこなどが詰められた重箱に、伝統的な京漬物が添えられていました。

タケノコは京都のこの伝統的なごちそうの主役となっている。

タケノコは京都のこの伝統的なごちそうの主役となっている。

錦水亭のダイニングルームは、ゲストを自然と日本の伝統文化の世界へといざなう。

錦水亭のダイニングルームは、ゲストを自然と日本の伝統文化の世界へといざなう。

かつての都は、冬でも色彩にあふれている。

かつての都は、冬でも色彩にあふれている。

私たちは八条ヶ池と長岡天満宮の息をのむような景色とともに昼食を楽しみました。長岡天満宮は、学問の神様として広く知られる菅原道真(845~903年)を祀る神社です。八条ヶ池は水面に梅や桜、そして赤いツツジの花が幻想的に映し出される春が有名ですが、私たちが訪れた季節でも、色鮮やかな景色と伝統的な建築物が織りなす魅惑的な世界に身を置くことができ、まるで絵画のなかの京都に迷い込んだかのような気分を味わえました。

「竹の径」京都市洛西竹林公園(京都府京都市)

竹林の道は、京都人の秘密のスポットです。

竹林の道は、京都人の秘密のスポットです。

亀甲竹は、訪れる人を別世界へと誘います。

亀甲竹は、訪れる人を別世界へと誘います。

その後、竹をテーマにした旅を続けるため、旅行者には見過ごされがちな乙訓地域の竹林を訪れることにしました。一般的に京都府の竹林といえば京都市の嵐山が有名です。しかし、京都府の豊かな地域文化を象徴する8種類の手作りの竹垣で囲まれた1.8kmの手つかずの竹林の道は、一見の価値があります。

起伏のある竹林を回るには電動アシスト付き自転車が適しています。竹林の丘を散策すると、ここが日本最古の民話『竹取物語』の発祥の地といわれる場所の一つであることを肌で感じることができます。特に、複雑な網目構造をもつ亀甲竹や、隣接する京都市洛西竹林公園にある色鮮やかな黄金色に緑色の縞模様が印象的な金明竹といった、まるで別世界のような竹に出合える竹林の魅惑的な雰囲気は、龍の首の珠やかぐや姫が出てくる幻想的な物語の世界に浸るには最適な場所でした。

京都市洛西竹林公園のミュージアムは、竹の豊かな歴史と多様性をテーマにしている。

京都市洛西竹林公園のミュージアムは、竹の豊かな歴史と多様性をテーマにしている。

京都市洛西竹林公園を散策。

京都市洛西竹林公園を散策。

海のオーベルジュ志積(福井県小浜市)

大地の恵みから海の恵みへ:海のオーベルジュ志積のアントレ、ディナーの前菜から輝きを。

大地の恵みから海の恵みへ:海のオーベルジュ志積のアントレ、ディナーの前菜から輝きを。

竹林を訪れた後、福井県の小浜市へと向かいました。市名が「小さな浜辺」という意味だと知った時、外国人の旅行者は笑顔になると思います。私たちは若狭湾を一望できる「海のオーベルジュ志積」を宿に選びました。この宿の料理は新鮮な食材を使用しており、ミシュランガイド北陸2021特別版に掲載されたこともあります。その夜は、タコの刺身、イカの煮付け、アカガレイの天ぷら、カンパチの燻製、サバのソテー、マハタの炭火焼きなど、海の幸をたっぷりと楽しむことができました。

海のオーベルジュ志積の眺めの良いダイニング。

海のオーベルジュ志積の眺めの良いダイニング。

龍泉刃物(福井県越前市)

越前打刃物を研いでいる様子。

越前打刃物を研いでいる様子。

福井県での次の目的地、越前市では1337年ごろからの歴史をもつ、いにしえの工芸品「越前打刃物」にふれました。越前打刃物は1979年に刃物鍛冶としては初めて国の伝統工芸品に指定された、由緒ある工芸品です。多種多様な越前打刃物で知られてる龍泉刃物を訪れた私たちを3代目の増谷浩司さんが出迎えてくれました。

増谷浩司さんが越前庖丁研ぎの極意を解説。

増谷浩司さんが越前庖丁研ぎの極意を解説。

越前打刃物:芸術性と実用性の融合。

越前打刃物:芸術性と実用性の融合。

研ぎ上がったナイフを桝谷師匠が検品してくれるのを待つ。

研ぎ上がったナイフを桝谷師匠が検品してくれるのを待つ。

越前打刃物は、その比類なき切れ味でよく知られている。

越前打刃物は、その比類なき切れ味でよく知られている。

龍泉の工房に足を踏み入れると、豊富な種類の包丁と龍の墨絵が印象に残る。

龍泉の工房に足を踏み入れると、豊富な種類の包丁と龍の墨絵が印象に残る。

龍泉はあらゆる種類のナイフを作っている。

龍泉はあらゆる種類のナイフを作っている。

彼は包丁作りの工程を入念に説明してくれました。包丁作り体験は鉄の間に鋼を挟んだ波紋のある板を砥石で研ぐところから始まりました。刃先を研ぐ作業は手間がかかりましたが、根気強く研ぎ続けることで、思い通りの切れ味が得られました。

越前打刃物を磨いている様子。

越前打刃物を磨いている様子。

柄と繪(福井県越前市)

刃部分を手磨きまで終えた後、柄部分に移ります。柄部分の体験のため、私たちは龍泉刃物と最近提携した漆塗りの柄を扱うメーカー、柄と繪に向かいました。柄と繪に入った瞬間、木製インテリアから漂うやさしい温もりからその背景にある職人の技が感じ取れました。

魅惑的な木の世界へ誘う柄と繪の入り口。

魅惑的な木の世界へ誘う柄と繪の入り口。

柄と繪の柄は、シンプルで伝統的なものから、カラフルで奇抜なものまである。

柄と繪の柄は、シンプルで伝統的なものから、カラフルで奇抜なものまである。

包丁の柄作りがこんなにも複雑なものだと知りませんでした。割れを避けるため、硬い木材に直接刃を取り付ける切れ目を入れないようにするなど考慮しています。この工程は、やわらかい木材に刃を取り付ける彫り込みをし、それを別の木材で包む手順も含まれています。この工程は非常に複雑で、素人にはできない作業です。包丁作り体験ではこのような複雑な作業は行われず、柄と繪のスタッフに刃を取り付けてもらう既製の柄を選びます。

柄と繪の柄に巧みに取り付けられる越前打刃物。

柄と繪の柄に巧みに取り付けられる越前打刃物。

昼食休憩後、2階スペースで柄の漆塗りを行いました。漆塗りの工程は楽しく、うっとりするような鮮やかな色のニスを人の髪でできた刷毛を使って木に塗装しました。漆塗り工程の完了後、包丁は最終仕上げのために柄と繪のスタッフに引き継がれ、後日、完成した包丁が届けられます。できあがった包丁をどのように使うかを決めるのは後日の楽しみになります。

人毛のブラシで木製の柄に漆を塗る。

人毛のブラシで木製の柄に漆を塗る。

漆塗りは単純な作業だが、最大限の集中力を必要とする。

漆塗りは単純な作業だが、最大限の集中力を必要とする。

ラ コリーナ近江八幡(滋賀県近江八幡市)

滋賀県にある近江八幡市は、江戸時代(1603~1868年)の雰囲気をいまに残す歴史的なまち並みで知られ、日本最大の湖、琵琶湖につながる美しい運河や、厄除開運の神様、譽田別尊をはじめとする3柱の主祭神を祀る131年創建の日牟禮八幡宮があります。このような人気の観光スポットが点在する近江八幡市には、あまり知られていない魅力的な場所があります。それは地元で有名な和菓子店たねやの旗艦店、ラ コリーナ近江八幡です。ここは単なる菓子店ではなく、まるでジブリ映画のワンシーンを彷彿させる芝生に覆われた広大な複合施設です。滋賀県の自然美をオマージュした造りのこの施設には、屋内にある森のオブジェから広々としたフードガレージまで、様々な装飾が施されています。

ラ コリーナ近江八幡の自然と建築の調和を楽しむ。

ラ コリーナ近江八幡の自然と建築の調和を楽しむ。

ラ コリーナ近江八幡のバームクーヘンの台。

ラ コリーナ近江八幡のバームクーヘンの台。

このような特別な場所でカステラやドイツ風のバウムクーヘンを購入することはここでしかできない貴重な体験だと感じました。この場所が私たちのすてきな旅にふさわしい締めくくりを与えてくれました。

最終更新 :
  • HOME
TOP