関西のソウルフード「お好み焼き」の魅力と関西の名店10選
2023年02月17日
関西の名物グルメとして長らく愛されている「お好み焼き」。
地域性が強く、具材や焼き方など地域によって様々なスタイルがあり、その食文化は世代を超えて受け継がれてきました。
お好み焼きを代表とする「大阪の鉄板粉モン」は、2022年「文化庁100年フード、有識者特別賞」を受け、家庭や飲食店による食文化継承活動が盛り上がっています。
また全国のお好み焼関連団体による「鉄板会議2022」では、【文化を味わう!コナモン100選】として、大阪の「豚玉」「洋食焼」、兵庫の「にくてん」、徳島「豆焼き」「いか天玉」が選定されました。
関西のソウルフードである「お好み焼き」に興味がある方に知っていただきたい、「お好み焼き」の魅力と歴史、自宅でも簡単に作れるレシピ、本場関西の名店をこの記事では紹介していきます。
目次
お好みの具材をお好みのスタイルで焼く「お好み焼き」
キャベツなどの野菜と魚介・豚肉や牛肉などの具材と、小麦粉・長芋・出汁を混ぜた生地を鉄板の上で焼いて作る「お好み焼き」。
一見ピザに似ていますが、生地は発酵させず、焼き方も日本独自の調理スタイルです。
お店で食べるだけでなく、スーパーで自分が好きな食材を買ってきて、家にあるホットプレートで調理して食べることも多く、家庭で作って食べる料理としても普及しています。
茶人が作った料理がルーツ?お好み焼きの歴史
かの有名な茶人・千利休が作った、小麦粉を焼いた生地に味噌を塗った「フノヤキ」がルーツと言われています。
「お好み焼き」の原型が完成したのは、明治時代。
お好み焼きの原型と考えられている「洋食焼き」は、西洋をイメージして作った関西発祥の料理で、子供のおやつとして親しまれていました。
「洋食焼き」は水で溶いた小麦粉を鉄板に広げ、その上にキャベツを置いて焼く。子ども相手のおやつでした。
のちに 豚肉や長ネギなどの具材が加えられるようになり、大人が食す料理としても普及していきます。
さらに美味しく・主食にもなるように、お好み焼きへと進化していったのは、大阪の人々が持つ「遊び心」が理由かもしれません。
第二次世界大戦後になると、戦前から続く食糧難と戦後の貧困から、安価な食材と鉄板一枚で作れるお好み焼き屋が大阪で次々と開業していきます。
お好み焼き屋は次第に大阪から関西全域に広がっていき、1970年代にお好み焼き店がテレビに登場したことがきっかけで、全国に普及しました。
地域によって食材も焼き方も異なる!多様な魅力を持つお好み焼き
お好み焼きは地域性が強く、一口にお好み焼きと言っても、食べる地域によって味や食感が異なります。
「文化を味わう!コナモン100選」を見ても、焼き方や名称など、地域の特性が表れています
大きく分けるなら、関西風の「混ぜ焼き」と広島風の「重ね焼き」2種類にまとめられます。
その違いは「作り方」です。
「混ぜ焼き」は生地と具材を、空気を含ませながら手早くまぜ、すぐに鉄板に広げて焼きます。
重ね焼きは水溶きの生地を薄くひいて、そこに具材を重ねる焼き方。
まさにフノヤキの延長線上にありますが、関西でものちに、混ぜ焼きが登場し、高度経済成長期には、それが全国へ広がっていきました。
ただ、あくまでもざっくり分けると2種類になるだけで、実際には焼き方や具材、生地の厚さなど、もっと多くの種類があります。
ちなみに、お好み焼きの生地に出汁を入れ始めたのは大阪で、その美味しさからどの地域でも出汁を入れるようになりました。
地域によって異なるのは、味だけではありません。お好み焼きに使う道具の呼び方にも違いがあります。
お好み焼きをひっくり返す時や切る時に使う、金属製の平べったい金属の調理器具は、大阪では「コテ」と呼ばれていますが、全国的には「ヘラ」と呼ばれています。
正式名称は「起こし金」であり、正式名称ではなく通称が普及していることも面白いところ。
このように多様性があることも、お好み焼きの魅力の一つと言えます。
お好み焼きの本場・関西で、地域ごとのお好み焼きを食べ比べする、「お好み焼き食い倒れ旅」を企画しても面白いかもしれません。
自宅でも簡単に作れる!お好み焼きのレシピ
お好み焼きは、自宅でも簡単に作れるのも魅力の一つです。
ご自宅で「お好み焼き」に挑戦できるように、基本的なお好み焼きのレシピを紹介します。
ここで紹介する具材を必ず入れないといけない訳ではなく、自分の好きな食材に置き換えても構いません。
自分が好きな食材をお好みで選べるのも「お好み焼き」の面白いところです。
材料(二枚分)
- キャベツ 240g
- スライス豚肉 50~60g
- 小麦粉 100g
- 卵 2コ
- 粉末かつおだし 小さじ1/2
- 水 120㏄
- 天かす 大さじ2
- お好みソース、けずり節、青のり、マヨネーズ 適量
お好み焼きの作り方
- キャベツ240gを千切りにして、3~4㎝幅にカットする
- 豚肉を長さ15㎝ぐらいに切る
- ボウルに小麦粉・粉末かつおだし・水を入れる
- スプーンでしっかり 生地を混ぜ合わせる
- ボウルに1枚分のキャベツ(120g)、卵1個、天かす(大さじ1)、4の生地の半量を入れて、大きめのスプーンでまず卵をくずし、生地と卵がキャベツにまとわるように、空気をふくませながら、ざっくり合わせる
- オイルをひいたフライパンを熱し、5を直径15㎝ぐらいに丸くおいて、真ん中を少しへこませ、周囲をととのえ、中~強火で3分ほど焼く
- 6に豚を脂身を外側にタテに並べ、ひっくり返して蓋をして、中~弱火で約4分焼く
- 蓋を取り、返して約1分焼いたら、できあがり
- お皿に移し、お好みソース、マヨネーズ、けずり節、青のりをトッピング
本場のお好み焼きが満喫できる!お好み焼きの名店10選
関西の各県ごとに1軒ずつ、日本コナモン協会が厳選した名店をご紹介。
「お好み焼き」の本場である関西に、「お好み焼き食い倒れ旅」をしに出かけてみませんか?
【大阪】おかる
1946年から続く老舗、「おかる」。
創業から変わらない味や焼き方は人気が高く、開店前から行列ができるほど。
昔ながらの定番の具材とギュウギュウ押し付ける焼き方、蓋をして蒸し焼きにするスタイルが特徴で、フワフワでありながら生地と具材が凝縮された食感が絶品です。
仕上げにマヨネーズで、通天閣や大阪城などの絵を描いてくれるマヨアートもこのお店の名物となっています。
【京都】鉄板焼あらた
京都の下町で昔から親しまれている“べた焼き”が有名で、地元客はもちろん観光客、著名人も訪れる人気店。べた焼きとは、生地をクレープのように薄くひいた上に、キャベツや具材を重ねて焼く、いわゆる“京都風お好み焼き”のこと。具材にそばかうどんを選べるのがあらた流のべた焼きだ。名物は、べた焼きの上に、牛のあごの肉を自家製ダレで炒めてのせた「あらたのお好み」。トッピングされたたっぷりの九条ネギが味のアクセントになっている。
【福井】風の街わらべ鯖江店
福井県鯖江市で、お好み焼きの本場・大阪の味が楽しめるお店。大阪に本店を構える人気チェーン「風の街」から粉やソース、ダシなどの素材を仕入れているので、味は折り紙付き。お好み焼きは、テーブルに備えられた鉄板を使って自分で焼くスタイル。
【兵庫】お好み焼志ば多
1947年創業、現在は3代目が暖簾を守るお好み焼の老舗。粉もんの聖地として知られる神戸市長田区の新長田本町筋商店街に立ち、モダン焼きの発祥として知られる名店だ。当時はそばの流通が少なく、初代女将がお好み焼きにうどんを合わせて提供したところ、評判になったのだとか。そばモダンはもちろん、今もうどんモダンもいただける。
【三重】ぼて福
1977年から半世紀近く続く、地元に愛されるお好み焼き店。生地とすべての具材を混ぜてから焼く“まぜ焼き”スタイルで、厳選した季節の食材を取り入れたお好み焼きを提供している。イチオシは、創業以来の人気を誇る「ぼて福特製焼き」。尾頭付きの海老が2尾に加え、ホタテやイカ、豚肉も入ったボリューム満点の一品だ。最後にかける自家製マヨネーズが、旨みをより引き立てる。
【奈良】かめや
1960年創業のお好み焼きとネギ焼きの老舗。お好み焼き、ネギ焼き、焼きそばメニューだけでも30種以上がそろうので、目移りすること間違いなし。なかにはチーズやうどんが入った変わり種も。お好み焼きは、弱火から強火へとじっくり焼き上げるので、キャベツの甘みが引き立ち、ふわっとした食感に仕上がる。
【滋賀】喜作
創業約50年の地元で愛されるお好み焼店。店内に入れば、13席が並ぶ長いカウンターと、ズラリと飾れるメニュー表に目を奪われる。メニューは、お好み焼をはじめ、焼きそば、焼きうどん、鉄板料理など目移りするほど多彩。カウンター席に座って、職人技をじっくり見学するのもおすすめだ。丁寧な手さばきと、焼き上がるまでの様子を目の前で楽しもう。
【徳島】はやしのお好み焼
地元の人はもとより観光客にも愛される、創業60年を超えるお好み焼きの名店。
全国のお好み焼きは「重ね焼き」から始まり、のちに「混ぜ焼き」が登場するが、こちらは「重ね焼き」。
「重ね焼き」とは、鉄板の上にまず生地を敷いて、次にキャベツ、そして肉や魚介の具材を上に乗せて焼く製法。生地はふっくらやわらかく、かつもちもちという独特の食感がたまらない。カウンターにある大きな鉄板でお好み焼きを焼き上げる、職人技を見学するのも楽しみのひとつ。
【鳥取】JAPANESE PIZZA 美空
鳥取の定番観光スポット「水木しげる記念館」のすぐ近くにある、名店「JAPANESE PIZZA 美空」。
「JAPANESE PIZZA 美空」では、境港のソウルフードとして親しまれる、薄くてペタンコに焼き上げた、独特なお好み焼きはおつまみにもピッタリ。
他にも「アワビのやわらか酒蒸し」や「黒毛和牛のステーキ串」など、様々な鉄板焼きのメニューが揃っており、お酒を楽しみたい方にお勧めの名店です。
【和歌山】和だ田
この道40年を超えるベテラン店長が営むお好み焼き店。和歌山で本場大阪の“粉もん”が味わえると、地元の人を中心に人気を集めている。生地には小麦粉をはじめ、5種類の粉をブレンド。牛スジ肉は黒毛和牛を使用、5mmの厚さに切った豚バラ肉をオーダーで取り寄せ、野菜も毎日自分で出向き仕入れるなど、素材にはとことんこだわっている。
まとめ
この記事では、関西のソウルフードである「お好み焼き」の魅力や歴史、名店を紹介してきました。
自宅で手軽に食べられることも「お好み焼き」の魅力の一つですが、生地の混ぜ方・焼き方によっても、味は大きく異なります。
この記事で紹介した名店は、いずれもお店のプロが焼いてくれるため、具材のポテンシャルを最大限に引き出した「お好み焼き」が食べられます。
最高に美味しいお好み焼きを食べたい方は、本場の関西へ「お好み焼き食い倒れ旅」に出かけてみてはいかがでしょうか。
本記事監修:熊谷真菜(くまがい まな)
食文化研究家、一般社団法人日本コナモン協会会長、鉄板会議実行委員会代表、全日本・食学会理事
1961年兵庫県西宮市生まれ。
2003年食文化継承を目的に各地を連携する日本コナモン協会を設立。年間500~600軒の飲食店をまわり、世界20か国でのコナモン交流会を開催、これまで2万人以上にコナモン(お好み焼、たこ焼、焼きそば、うどん、点心など)の指導をしてきた。協会設立20年の節目に、食文化継承活動の一環として「鉄板会議2022」を開催。「お好み焼き」をテーマに日本全国の店主や有識者を交え討論を行い、本会議では「100年後も残したい 文化を味わう! コナモン100選」を発表した。