三重の日本酒物語 若い感性で紡ぐ未来
2023年02月07日
三重県西部の伊賀盆地(正式名称:上野盆地)は、地層が幾重も隆起してできたミネラル豊富な土壌を誇り、複数の一級河川が合流する水が豊富なエリア。山間部ならではの寒暖差が大きい環境要因も手伝い、古くから酒米が生産されてきた。現在もなお県内の酒蔵で使われる酒米の大部分がここから出荷されているという。高い品質と安定した生産量を背景にした酒造りの文化は脈々と受け継がれ、今では世界のマーケットで取引される伊賀発の銘酒も少なくない。
伊賀盆地のほぼ中央に立地し、1892年から酒造りに尽力する大田酒造。日本酒の原料の定番といえば「山田錦」だが、こちらでは三重県で誕生した「神の穂」も用いられている。「神の田でとれた美味しい米」という高尚な名前が付けられたこの酒米は、仕込むと穏やかな香気と優しい味わいを引き出すのが特徴。20代ながら七代目杜氏として第一線で活躍する大田有輝氏の若い感性にも響く、新しいブランド米が歴史ある酒蔵に新風をもたらしている。
酒米へのこだわりのほかに木桶仕込みや蔵内の井戸水を使うなど、120年以上も不変の昔ながらの製法も守り続けている。また寒さが厳しく、周囲の山々が雪化粧を始める酒造りの時期は、蔵に泊り込んで昼夜問わず醪(もろみ)の温度管理を徹底。少量ずつ・低温発酵で丁寧に醸すことで、主力銘柄の「半蔵」にふさわしい華やかで芳醇なテイストが生み出されていく。その美味しさは県内の新酒品評会において、常に上位の賞を受賞するだけでなく、「G7伊勢志摩サミット2016年」のワーキングディナーでは、「純米大吟醸 半蔵」が乾杯酒として各首脳の盃に注がれるという最高の名誉も獲得。名実ともに日本を代表する酒蔵のひとつとなった。
今後は銘酒の地位を確立した「半蔵」と並行しつつ、新たなブランドにも着手する。中でも「食事と人を繋ぐ」をコンセプトに手掛けた「&(アンド)」シリーズは、食中酒の分野を開拓するための主力として評価が上昇中。現在から次世代への橋渡しに邁進する老舗酒蔵の挑戦は、まだまだ始まったばかりだ。
株式会社大田酒造
- 住所
- 〒518-0121三重県伊賀市上之庄1365-1
- 見学時間
- 9:00-17:00(見学は時期によって開催。予約制。販売店は9:30~19:00)
- 定休日
- 土曜、日曜、祝日(販売店は無休)
- 外国語HP
- なし
- 交通アクセス
- JR大阪駅からJR鶴橋駅にて近鉄線に乗り換え、近鉄鶴橋駅から伊賀神戸駅にて伊賀線に乗り換え、神戸駅から猪田道駅下車、徒歩約28分
- 所要時間目安
- 約130分