天王寺舞楽(聖霊会の舞楽)

天王寺舞楽(聖霊会の舞楽)

2021年12月26日

The KANSAI Guide

(てんのうじぶがく(しょうりょうえのぶがく))

大阪市 関西
国指定重要無形民俗文化財

日本仏教の始祖、聖徳太子の御霊を慰める 華麗で時に勇壮な古代舞楽。

推古天皇元年(593年)に聖徳太子によって建立されたと伝わる日本仏法最初の官寺で、大阪市天王寺区の地名の由来ともなった四天王寺に伝わる「天王寺舞楽」。日本仏教の祖である聖徳太子の4月の忌日(4月22日)に奉納されます。四天王寺は、聖徳太子の寺として、宗派を超え多くの人びとから信仰され続けており、真言宗の開祖である弘法大師も、遣唐使として唐に渡る前後の期間に四天王寺で修行をしました。弘法大師の忌日である毎月21日は大師会、聖徳太子の忌日である毎月22日には太子会の法要が営まれ、境内は多くの人で賑わいます。

楽所解体の危機を乗り越えたのは大阪の民衆の力。 今も見事に伝統を継承し磨き上げ続けている。

六時堂の前の石舞台。舞台の四方に掲げられた赤い玉が、曼珠沙華をあらわしている。

六時堂の前の石舞台。舞台の四方に掲げられた赤い玉が、曼珠沙華をあらわしている。

天王寺舞楽は、4月22日の聖徳太子の忌日に太子を偲んで行われる聖霊会において奉納される舞楽で、1,000年以上前の王朝時代の舞楽の姿を現代に伝えるものとして、「聖霊会の舞楽」の名称で国の重要無形民俗文化財に指定されています。天王寺舞楽の舞と雅楽を伝承する組織を、天王寺楽所といい、聖徳太子が、雅楽の前身である外来の音楽で「仏法僧を供養せよ」と命じ、設置したのがその始まりとされています。楽所は、四天王寺以外にも、京都の宮中(大内楽所)、奈良(南都楽所)にも存在し、江戸時代(1603〜1868年)には、天王寺楽所とともに三方楽所と呼ばれ、日本の雅楽伝承を担ってきました。
しかし、時を経て明治(1868〜)になると東京遷都に伴い、天皇に付き従って三方楽所の多くの楽師が東京に移ってしまい、天王寺楽所は存続の危機を迎えます。この危機に立ち上がったのが大阪木津願泉寺の住職であった小野樟蔭氏。大阪にわずかに残っていた楽師や、雅楽に造詣の深い篤志家を集め、「雅亮会」を組織して初代会長となりました。現在ではこの雅亮会が「天王寺楽所」の伝統を受け継ぎ、「天王寺楽所雅亮会」として天王寺舞楽を伝承しています。

王朝時代の姿を今に伝える演目の数々。 天王寺舞楽のその力強い舞台は、ほかに類を見ないもの。

天王寺舞楽は現在、四天王寺だけでなく東京や海外でも度々公演され、人気を博している。

天王寺舞楽は現在、四天王寺だけでなく東京や海外でも度々公演され、人気を博している。

天王寺舞楽が舞われるのは、六時堂前の、天上に咲く曼殊沙華を模した真っ赤な紙の花が飾られた石舞台。振鉾(えんぶ)に続く聖霊会冒頭の演目は、雑面をつけた5人の舞人が舞う「蘇利古(そりこ)」。別名「太子お目覚めの舞」と呼ばれるもので、この舞楽の間に堂内の本尊である聖徳太子御影の帳が上げられます。続いて、師子、菩薩、迦陵頻(かりょうびん)、胡蝶などの供養舞が続き、現代では4時間半にもおよぶ法要において、およそ10曲の舞楽曲が演奏されています。
なお、雅楽や舞楽と聞くと、しめやかに行われるイメージがありますが、天王寺舞楽は古代の仏教法要における盛儀(大掛かりな儀式)を今に伝えており、その力強い舞態はほかに類を見ないものです。

脇道へ足を踏み入れれば別の時代へタイムスリップ。 さまざまな時代の施設、建物が織りなす天王寺区の景観。

古墳から高層ビルまで、美術館から下町まで、何もかもを内包・同居させるのが天王寺の魅力。

古墳から高層ビルまで、美術館から下町まで、何もかもを内包・同居させるのが天王寺の魅力。

1936年に天王寺公園の一角に開館した大阪市立美術館。仏教美術に関する特別展なども開催される。

1936年に天王寺公園の一角に開館した大阪市立美術館。仏教美術に関する特別展なども開催される。

四天王寺周辺には、歴史ある寺社町にはじまり、「通天閣」のそびえる「新世界」、そして高さ300mの超高層ビル「あべのハルカス」と、時代を超えた建造物がモザイクをなしています。現代的なビルや駅舎のすぐ脇には、昔ながらの商店街が広がっているというなんとも大阪らしい光景も魅力的です。周辺を散策するなら、真言坂、源聖寺坂、口縄坂、愛染坂、清水坂、天神坂、逢坂の天王寺七坂へ。石畳の続く風情ある坂を巡るコースの中には、四天王寺の鎮守として聖徳太子が創祀した「大江神社」をはじめとした、古社古刹が立ち並んでいます。さらに仏教美術に造詣を深めるのであれば、「大阪市立美術館」に立ち寄るのもおすすめです。8,500件を超える館蔵品や、社寺などから寄託された作品には、国宝や重要文化財に指定されたものも多く、随時陳列されています。
周遊に疲れたら、「あべのハルカス」の近くにある「てんしば」でひと休み。茶臼山古墳に続く人工芝の広場には、カフェやレストラン、産地直売所など数々の店舗やアクティビティ施設が併設されています。天王寺舞楽を観覧し、その魅力に感銘を受けた方は、後日、奈良の法隆寺や太子町の上ノ太子など、聖徳太子ゆかりのスポットを巡ってみるのも面白いかもしれません。

画像提供:天王寺楽所雅亮会/(公財)大阪観光局

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