伝統工芸の粋を集めた、「曳山」という動く芸術品
2020年12月01日
日本のお祭りで、車輪付きの建物を見かけたことがあるはず。曳山(山車)と言ってお祭りの時に招いた神様が宿る依り代だそうです(ちなみに肩で担ぐのがお神輿。神様が神社から移動する時の乗り物だそう)。その内、美しく飾るようになり、車輪がついて動かせるようになったのだとか。滋賀県には曳山を曳く豪勢なお祭りがいくつかあります。
滋賀県の主な曳山まつりカレンダー
「長浜曳山まつり」の見どころは子どもたちの歌舞伎
「長浜曳山まつり」は長浜八幡宮のお祭りで4月9日からいろんな神事が始まります。曳山が曳かれるのが4月14~16日。この曳山がめっぽう美しくて、伝統工芸や美術ファンはぜひ近くで観賞を。彫刻や金具の飾りは江戸時代(1603~1868年)の名工たちによるものらしく、日本の絢爛豪華な絵画や織物にまじって、中には16世紀頃のヨーロッパのタペストリー、年代物のペルシャ絨毯なども。「動く美術館」と称されているのも納得です。この豪華な曳山内に設けた舞台で子どもたちが歌舞伎を演じるのが、「長浜曳山まつり」最大の特徴で、子供たちが舞台に登場すると、ぎっしりと詰めかけた観光客からは大歓声。子どもたちの衣装も美しく、白塗りの化粧に歌舞伎ならではの所作で熱演する姿は、まさに日本のエキゾチシズム。3日間の内、曳山を曳いていろんな場所で歌舞伎が演じられるそうなので、全部見てみたい!
ちなみに曳山は市内に13基あり、内1基は毎年登場するものの子供歌舞伎がない。残る12基の中から4基が毎年入れ替わって祭に登場するそう。ということは、来年、再来年も違う曳山が見られるということです!
祭り期間じゃなくても、曳山が間近で見られる
「長浜曳山まつり」の曳山は「曳山博物館」で常時2基が展示され、細部までじっくりと観賞できます。曳山を解体して修理する「修理ドック」もあり、時期によってはのぞき窓から見学が可能。長浜の曳山に限らず各地の山車の修理を行っているそうです。日本の伝統工芸の修理現場が見られるなんて、なかなか貴重な機会です。
4月19・20日の「水口曳山祭」は、16基の曳山を所蔵し毎年5基の曳山が巡行します。「水口歴史民俗資料館」では1基の曳山が展示されています。
10月に開催される「大津祭」は13基の曳山が市内を巡行し、曳山にはからくり人形が積まれます。いずれも日本有数の古いからくり人形で、AIなしのゼンマイだけでこんな繊細な動きができるのかと驚かされる名品揃い。「曳山展示館」では曳山の原寸大模型が展示され、からくり人形の映像も見ることができます。「大津祭」では「曳手ボランティア」を毎年募集しているそう。9月中旬の説明会へ出席することが条件なので、日本に長期滞在されるなら申し込んでみては。