奈良の日本酒物語 春日大社 酒殿
2020年12月10日
奈良の日本酒物語_春日大社 酒殿
1300年前、日本は現在の奈良県に大和朝廷が誕生し、689年浄御原令を施行して国号を倭から「日本」とし、大王にかわる王を「天皇」とする制度ができて、「日本国」が姿を現したと云われている。もちろんそれ以前から人々の歴史はあるし、戦争も統治もあった。人が集まれば和合も諍いも起きるのが常であろう。ただ、「日本」という名が登場するのはこの時からである。その日本の古代史を語る歴史家たちはそこに「酒」が介在していたという。何につけても酒は必要だった。だから神事にも酒は付きものだ。
そのことを今に伝えるのが春日大社の酒殿ではないだろうか。春日大社は768年造営された神社で、世界遺産でもあるが、奈良時代に国家・国民の繁栄を祈願して創建された。そこに859年神酒醸造所として「酒殿」ができている。現在三月十三日に行われている例祭(春日祭)にお供えする濁酒を作るために千年以上も作り続けられているのだ。このように古来から続けられているのは春日大社だけという話でもある。勿論酒造りには時代の変遷もあるが、「続く事の驚異」がこの酒殿にはあるといえよう。現在残っている建物は1632年に造り替えられたもので、国の重要文化財指定となっている。
【ドラマチック酒蔵】奈良豊澤酒造
酒殿での醸造始めは二月初めで、かつては神職の酒殿家が代々造っていたが、明治以降は地元に任された。米を洗い、蒸し、麹造り、酒母造りは酒殿に電気も水も通っていないので、地元の酒蔵に頼ることになる。奈良豊澤酒造はその酒殿預の役目をになっており、自社とは違う酵母を使い、味も甘味のある酒ができるという。
酒殿を見学して、さらに酒造会社を見学するとその違いがより分かるだろう。酒殿は天井の高い白壁造りで、屋根に蒸気抜きがついていることもかつてここでも仕込みをやっていたことが分かるという。
酒殿で造られていたのは白酒と黒酒。白酒は濁酒でアルコール分15.5度の相当甘い酒であるが、黒酒は清酒でアルコール分14.6度のやや辛い酒であるという。
これらの話を奈良豊澤酒造で聞くことができるのは、この酒蔵で酒母造りをしているからである。歴史を含め「継承されてきた」苦労も聞きながら酒蔵を見学することはまた大いなる楽しみとなるのではないか。
奈良豊澤酒造株式会社
〒630-8444 奈良県奈良市今市町405番地
見学時間:平日8:00-17:00
交通アクセス
①近鉄難波駅から近鉄奈良駅下車、JR奈良駅より奈良交通バス「上三橋停留所」より徒歩約5分
②JR難波駅からJR奈良駅下車、奈良交通バス「上三橋停留所」より徒歩約5分
③近鉄京都駅から近鉄奈良駅下車、JR奈良駅より奈良交通バス「上三橋停留所」より徒歩約5分
④JR京都駅からJR奈良駅下車、奈良交通バス「上三橋停留所」より徒歩約5分