福井の日本酒物語 熟成物語

福井の日本酒物語 熟成物語

2020年12月10日

福井の日本酒物語_熟成物語

 ワインのヴィンテージはとても重要な選択ポイントとなっている。今年のボジョレーヌーボーはどうだ、とか日本でも多くの関心を得ているように醸造年は話題に欠かせない。しかし、かつて日本酒でいえば現代日本人にとって古酒というと、決して良い印象ではない。その年の「新酒」が一番という印象かもしれない。
 しかし、日本酒にも古酒を愛でる伝統はあった。三百年前の書物にも四五年経った酒は味が濃くて最も良いという書き方もされていた。それならば、現代に「古酒」が甦ってもよいではないか、と誰もが思うかもしれない。実際に日本酒の年代ものが出てきている。これは日本人より先に海外の方々が探し求めるようになるのではないか。その予感はある。
 1985年、長期熟成酒研究会が設立され、いまや41社の酒蔵が会員となって「熟成古酒」作りに励んでいる。「満三年以上蔵元で熟成させた、糖類添加酒を除く清酒」を熟成古酒と呼ぶのであるが、こうした酒はこれまでにも様々な蔵元で試されてきていることも事実だろう。ただ、明確なラベル表示がなかったりしたため、消費者の要望にしっかり応えていなかったという反省があるという。その古酒にも取り組む酒蔵を紹介してみよう。

【グッドファイト酒蔵】
 福井県の越前大野市といえば、「天空の城・大野城」として人気の観光地だが、明け方、雲海の中に現れる城が見られるのは冬場、11月から4月という。とはいえ、この時期越前大野は豪雪地帯であるため、本格的な冬になると雲海を望む山には登れない。だから見たい人は11月ということになろうか。

ただ、この雪深い土地だからこそ美味しい水、美味しい酒ができる。日本の「名水百選」にも選ばれた地下水は、まさに「白いダイヤ」と呼ぶ雪によってもたらされるのだ。この地に約120年前から酒造りをしている南部酒造場は、伝統的な酒に加えて「熟成古酒」にも取り組んできた。「昔ながらの製法で仕込んできた古の味は熟成を経ることで想像を超える未知の味わいに生まれ変わった」という。

「貴醸酒」を1年、3年、7年、10年と並べると徐々に色は濃くなり、甘さは増して行くが、透明感のある甘みとなり、何も知らずに飲めば、果たして日本酒だと分かるかどうか、とも言われている。大吟醸の拾年古酒は上品で骨太な飲み心地だし、これは「ぬる燗」(人肌くらいに温めた酒)は一番。なんとも様々なバリエーションの料理に合うというから見逃せない。地元のやまぶどうワインまで手掛ける南部氏の心意気が多様な酒を創り出しているといえよう。

株式会社南部酒造場
〒912-0081福井県大野市元町6-10(越前大野七間通り中央)
営業時間:9:00-17:00
定休日:不定休
外国語HP
交通アクセス
①JR京都駅からJR福井駅にてJR北陸本線に乗り換え、JR越前大野駅下車、徒歩約10分 (所要時間目安:約155分)
②JR京都駅からJR敦賀駅にてJR北陸本線に乗り換え、JR越前花堂駅にてJR越美北線(九頭竜線)に乗り換え、JR越前大野駅下車、徒歩約10分 (所要時間目安:約190分)

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