兵庫の日本酒物語 輪になるチカラ
2020年12月10日
兵庫の日本酒物語_輪になるチカラ
国宝で世界遺産「姫路城」は、大阪駅から一時間余りで到着できる近さにある。京都からでも新幹線なら一時間かからない。だから海外からの観光客も多いという。かつて『007』の映画の舞台ともなった。国際的な認知度も高いのは頷ける。
だから、姫路市は文化交流にも力が入る。姫路市地方創生推進室が、播磨広域連携協議会が、と幾つも行政機関が連携して活動し、多くのイベントを開催している。そうした中からGI(地理的表示:geographical indication)として「GIはりま」が指定を受け、地域の日本酒ブランド化がなされてきている。「GIはりま」は播磨地域の22市町で山田錦という原料米と米麹を使った酒のみを認定商品とするもので、第一弾では15蔵52銘柄を認定している。
こうしたことを可能にしたのは、酒蔵同士の深い付き合いがあってのことだ。驚くべきことに播磨の酒蔵では本来ライバルであるはずなのに「得意先」を紹介し合ったり、製法などを教えたり、一緒にイベントに参加して他の蔵の酒を売ったり紹介したりしているという。もちろんそこには各蔵の「自信」があってのことであり、それぞれが自分の酒に「違い」を充分に理解してのことであろう。考えてみれば、お客様からすれば、酒のプロに自社のものではない酒を教えてもらうことほど「買う気になる」ものはないかもしれない。うまく輪になって、それぞれの魅力を伝え合っているともいえる。
【ウエルカム酒蔵】壺坂酒造
その播磨・夢前町の酒蔵の一つが「壺坂酒造」であるが、これまで酒蔵の歴史を1805年創業と書いてきた。ところが、2020年に家系図が発見されて、1631年という江戸時代初期のスタートであることがわかった。
215年の歴史が一気に390年となり、当主はこれまで二十四代目といわれてきた謎が解けたような思いであったようだ。壺阪家の初代・又右衛門は姫路の魚町からまずは香寺町に移住し酒造りを始めたようだ。それなら一代16年程度だから理解できる。
当主はいろいろと販促の試みをしている。現在日本では自転車も飲酒運転になるので、折角自転車で回ってきても試飲できないから割引システムを採用したり、ニュースになる試みならできるだけ参加する。姫路市が以前スタンプラリーを22蔵でやった時も行政のアプローチに大いに賛同した一人だ。
播磨は今や日本酒の米の代名詞となっている「山田錦」を原料米として、その独自性として展開する酒処にしたいというGIの思いにあふれている地域だ。