大阪の日本酒物語 ここからの「門」
2020年12月10日
大阪の日本酒物語_ここからの「門」
「門」にまつわる話は多くある。それは世界の文学や映画をみても、よく取り上げられる場所であり、境界・閾を示したり、新しい取組みへの「入門」だったりする。この場所「門」がいかに重要であるかはフランツ・カフカの『城』でも大いに語られるところだ。我々はいつも何かしらの門の前に立っているともいえる。日本映画『羅生門』はヴェネツィア映画祭で金獅子賞を取ったが、日本映画を世界に知らしめる画期的な作品だった。この羅生門は京の南の守る門であり、本当は羅城門。幾多のドラマを生んできた場所だ。京都は北に山を背負った盆地で南に開けている。だから、京都から流れ出る淀川は水路としても発展した。ここから大阪・浪花に通じる。かつて大阪湾はかなり中流まで広がっていて、盛んな交易地であった。京都と大坂の境ということでは、川沿いを含めて様々な文化が根付いたともいえる。
京都から大阪の間には幾つも面白い場所がある。鴨川が幾つかの川と合流し、淀川となって大阪湾へそそぐからでもあるが、そのひとつが「交野」ではないか。
川沿いに石清水八幡宮もあり、海が迫っていた肥沃な地には隠れた文化が残っているといえるだろう。
【シグニフィカント酒蔵】 大門酒造
交野を流れる「天野川」は中世日本文学でも著名な『伊勢物語』で登場するが、その主人公・在原業平が主君の供で訪れ、この地で酒宴に臨んだことも『古今和歌集』に載っている。こうした歴史文献を書した冊子を大門酒造が出している。大門酒造は200年前から東西の交通路に面した交野で創業している。
この地には「大門」という家が全体の三分の一もあり、いかにも交通の要衝地を意味していたのではあるまいか。200年の伝統だけでなく新しい試みも多く、そこには大阪という「町衆の文化」が根付いている。港の持っている集積地としての「ものの吟味」に優れた者が残っていく商人魂もある。舌が肥えた人が多いことも大阪ならではの事実だ。この京都と大阪の流通「門」がここに息づいてきた。
ここで、日本酒の楽しみの一つを紹介してみたい。それは瓶に貼られたラベルの面白さだ。ワインのラベル収集をされる人も多いが、日本酒のデザインも凄いといえる。かつてゴッホなどが日本の絵やデザインに憧れたように、その魅力は一覧してもらえればわかる。その中で「大門」のラベルは日本酒では珍しいかもしれない。ひとつ揃えてみてはいかがだろうか。