「海」「絶景」「神話」そして「伝統芸能」 橋でつながるダイナミックなパノラマライン!

「海」「絶景」「神話」そして「伝統芸能」 橋でつながるダイナミックなパノラマライン!

2021年02月09日

The KANSAI Guide

西洋ではイスラム帝国が中央アジアからエジプト、北アフリカまで勢力を拡大した8世紀。日本では最古の歴史書『古事記』『日本書紀』が編纂された。そこに登場する夫婦の神、イザナギとイザナミが天から大きな矛で国土をかき混ぜ、ポトンと雫を1滴落として生まれたのが淡路島。そこを足掛かりに日本列島を構成する島々を作っていく。これがいわゆる「国生み神話」だ。
 日本の原点といわれる神秘の淡路島を中心に、神戸・明石から淡路島をとおして徳島に繋がるこのラインは、一方で「海」を中心にパノラマが広がる豊かなエリアだ。古代から現代にいたる物語、伝統芸能、絶景、味覚をダイナミックに孕んだエリアは、まさに「パノラマライン」だ。
 淡路島は本州と四国に挟まれた瀬戸内海最大の島だ。この島を結ぶのは、本州・兵庫県神戸市とは世界最長のつり橋(3,911m)である明石海峡大橋と四国・徳島県鳴門市に挟まれた鳴門海峡に架かる大鳴門橋だ。

 明石海峡大橋からは、高さ300mからの絶景パノラマが広がる感動の体験ツアー(予約制)がある。大鳴門橋の眼下には、台風の雲のように白く巻いたダイナミックな鳴門の渦潮が流れる。これは、大鳴門橋の北(瀬戸内海)側、南(太平洋)側で干潮と満潮の時刻が正反対であり、その干満差で生まれる激流がつくり出す自然の芸術だ。鳴門の渦潮は最大で直径約30mにもなり、メッシーナ海峡(イタリア)、セイモア海峡(アメリカ)とともに世界3大渦潮に数えられる。もしかするとこの壮大な渦潮は、イザナギ&イザナミが、かき混ぜた際の名残かも知れない。渦潮ができる仕組みなどは、大鳴門記念館内のうずしお科学館で学べる。

 温暖な淡路島は、別名「花と緑の島」と呼ばれるほど豊かな花々が一年を通じて溢れている。島北部にある兵庫県立公園あわじ花さじきは、広大な丘の斜面が花のじゅうたんのように四季折々の花畑が広がる。遠くに見渡せる大阪湾と明石海峡の海の青とのコントラストが美しい。淡路夢舞台、淡路島国営明石海峡公園など周辺にも花のスポットがひしめいている。

 島の中央部には、日本最古の神社とされ、イザナギとイザナミが祀られた伊弉諾神宮がある。国産み・神産みを終えたイザナギはこの地で余生を過ごしたといわれる。そこから山側へ入った丘にあるのがおのころ島神社。このおのころ島こそ、イザナギと伊弉冉が最初にポトンと雫を落とした場所だ。今では二神の由来から縁結びの神様として親しまれている。

 淡路島といえば玉ねぎが有名で全国1の特産地である。江戸時代まではその独特な香りで、日本では定着しなかった玉ねぎだが、明治初期に関西でコレラが大発生した際、コレラに効くという噂が広まり食べられるようになった。特に南あわじの玉ねぎは、香川県につながる和泉砂岩帯の砂交じりの土が玉ねぎ栽培に適していていたため、通常の1.4倍という糖度だ。また、淡路島を囲む二つの海峡が生み出す速い潮の流れは、身の引き締まった明石鯛や鳴門ワカメをはぐくむ格好の漁場ともなっている。

 島南部の三原地区では、淡路人形浄瑠璃が500年前から大切に受け継がれている。これは1体の人形を3人の人形遣いが操り、太夫の「語り」と三味線の「演奏」で、物語を演ずる人情的な人形芝居。歌舞伎とともに江戸時代の庶民に人気を集めた大衆芸能だ。
現在は淡路人形座で毎日代表的な演目の公演が行われており、舞台裏を見せるバックステージツアーも楽しみの一つだ。また淡路人形浄瑠璃資料館には、淡路人形浄瑠璃の名門一座で使われていた、人形や道具一式などが展示されている。

 淡路島(AWAJISIMA)の「AWA」は徳島県の旧国名「阿波(AWA)」に通じており、淡路島と徳島県は共通の文化圏にあったことがわかる。それを示すのが阿波人形浄瑠璃だ。淡路人形浄瑠璃が阿波の百姓たちに伝わり、彼らが独自に発展させた。芝居小屋で上演するよりは野外で多くの人と楽しむことが多かったので、人形は他の地域のモノより大きく、動きも派手なのが特徴だ。現在は徳島県立阿波十郎兵衛屋敷で公演を見ることができる。

 徳島で生まれた有名な芸能が阿波おどり。400年前、徳島城の完成祝いをきっかけに町民が踊ったことが始まりとされる。踊ることを禁じられていた侍が顔を隠して踊ったことが、ほっかむりをして踊る独特の男踊りの由来ともされている。三味線、笛、鉦(かね)、太鼓などによって奏でられ、踊る者を陶酔に導く2拍子のリズムが激しい。

「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿保なら踊らにゃソンソン」という掛け声とともに、毎年8月中旬に徳島市内を会場に開かれる阿波おどり本番では、約10万人が踊り、100万人を超える見物客が訪れる、日本最大の大イベント。阿波踊りは海を越え、ブラジルのリオのカーニバルを始め世界各地の踊りとも共演し、人気を博している。
 同じ江戸時代頃から、庶民によって盛んになったのが四国八十八カ所霊場巡りだ。四国・讃岐(現在の香川県)に生まれた僧侶、弘法大師・空海が修行した地を回る霊場巡りは、八十八カ所の霊場を巡ることによって人が持つ煩悩が消え、願いがかなうとされる。その第一番札所が徳島市にある霊仙寺だ。ここから全行程およそ1460キロに及ぶ巡礼の旅が始まる。

 徳島の食材としてすっかり定着しているのが、徳島県が開発した地鶏。阿波踊り(AWA・ODORI)と尾羽が伸びた美しい立ち姿をかけて阿波尾鶏(AWA・O・DORI)と命名。うま味成分を多く含むおいしさに高い評価があり、ブランド鶏として定着している。

 日本誕生の神秘的な「国生み神話」、庶民が求めた「人形浄瑠璃物語」や熱狂的な「阿波踊り」。淡路島を挟む2つの「海の架け橋」と「花と緑の島」。玉ねぎに代表されるグルメなど…。
海を中心としたパノラマラインは、やがて徳島からさらに霊場四国八十八か所へと続いていく。広大なマリンビューを満喫しながら、ゆったりした時の流れを満喫するひと時はいかが?

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